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7章:オレにとってはぬるキャン△(3)

「山のふる里キャンプ場へようこそ! 管理人の山峰だ! この合宿のコーチも務めさせてもらう! 1泊2日の短い間だが、よろしく頼む!」


 山を切り拓いて作られたキャンプ場の入り口でオレたちを出迎えたのは、筋肉隆々でタンクトップ一枚のおっさんだった。

 なお、バックに見える管理人用であろうロッジの入り口には、鹿と猪の頭蓋骨が飾られている。

 自分で獲ったのだろうか?

 趣味悪すぎでは?


 それにしても、ノリが完全に軍隊だ。

 サンダガース軍曹みたいな罵詈雑言を浴びせてこないだけマシだが、正直苦手なタイプである。

 中学生など、すっかりビビってしまっている。


 彼の脚の影からぴょこんと幼女が顔を出した。

 さらさらの黒髪をサイドテールにした幼女は、不安げな表情でこちらを見ている。

 コーチの娘さんだろうか。

 ……まさか誘拐してきたんじゃあるまいな。

 なかなか利発そうな顔立ちだが、引っ込み思案らしく、目を合わせるとさっと脚の影に隠れてしまった。

 コーチになついてはいるようだ。


「選抜された諸君には、アシスタントと協力し、オリエンテーリングを行ってもらう。

 なお、中学生二人と高校生二人で4人チームを組んで挑んでもらう。

 結果は学校に報告するから、心するように!」


 オリエンテーリング……う……頭が……。


「カズ?」


 頭を抱えたオレの顔を、由依が心配そうに覗き込んでくる。


「いや、なんでもない」


 ちょっと、ブラックリーマン時代のトラウマが蘇っただけなんだ。


「オリエンテーリングって、要するに山の散歩だろ?」


 だれかがそんな生ぬるいことを言った。


 それにしても、こんなキャンプに集められるだけあって、精悍な顔つきの連中ばかりだ。

 なんというか……最初の人生だと、オレのような陰の者にとっては、苦手だった人種である。


「バカを言うな!

 オリエンテーリングとは頭と身体をフルに使う競技である! 

 山に配置された4箇所のポイントを順番に周り、山頂のゴールまでにかかる時間を競うのだ!

 タイムと順位で、夕飯の素材のグレードが決まるからな! トップは松坂牛。ビリは割り箸だ!」


「松坂! じゅるり」「割り箸は食材じゃねえだろ」「つまりメンマってことじゃね?」


 参加者たちがざわつく中、コーチは選抜者に地図と発煙筒を配った。


「地図にポイントの場所が書かれてないな」


 由依に地図を見せてもらったオレは、思わず疑問を口にした。


「ほう、よく知っているな。ボーイスカウトでもやっていたのか?」


 コーチが嬉しそうに顎をさすった。


「いえ、そういうわけでは……」

「地図は移動範囲を示すための参考だ! ポイントは自分で見つけるように」


 無茶を言う。

 地図に赤線で記された範囲は、ざっとみて5キロ四方はある。かなり起伏があり、獣道しかない山でだ。

 地図にポイントの場所が書かれていても、探し出すのは困難だろう。


「発煙筒を炊けば、スタッフが助けにいく。救助を求めるのに使ってもいいぞ」


 なるほどな。

 使ってもいいぞ、か。

 このゲームのルールがわかってきたぞ。

 だとするなら、次に課されるのは――


「チームに一人は女子を入れ、全員揃っていないとゴールは認められないってとこですかね?」


 オレの問いに、コーチは目を見開いた。


「ほう……今年は随分優秀なのがいるな。そういうことだ!

 チームを組んだ者からスタートしてよし! 不要な荷物はロッジに置いて行け!

 娘の千花も応援しているからな!」

「が、がんばってください」


 コーチの後ろからのかわいい小声の応援に、生徒達の顔が緩む。


「ではスタート!」



ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 元オリエンテーリング部の人間としては恐怖しか感じないルール! 大学生でもゴール不可能だ……
[気になる点] 自力でポイント探さないと行けないのははもはやオリエンテーリングじゃなくて宝探しでは? 5キロ四方の山中でノーヒント探索はただの運ゲーになってしまうかと
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