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6章:オレの義妹が戦い続ける必要なんてない(16)

 オレはスサノオの生首を拾い上げ、治癒魔法をかけた。

 しかし、ぼろぼろと崩れていくそれは、回復する気配が全くない。


「こんな状態で無理矢理魔力を使ったからな。どうやら治癒魔法も受け付けないらしい」


 そう言うスサノオは穏やかな表情だ。


「神社でも、双葉を庇ったんだな」


 あのときは、オレにカグツチを倒させるためだと思っていたが、それだけじゃない。


「……そう思うか?」

「娘、なんだろ?」


 以前スサノオが言っていた、ヴァリアントと作った子供というのが双葉なのだろう。

 長の特殊能力が双葉に通じにくかったのも、そのせいか。

 おそらく相手はかつての妻だ。

 どうしてうちの両親が育てることになったかまではわからないが。


「………………そうだ」


 長い沈黙の後、スサノオは小さくそう言った。


「双葉には?」

「言わなくていい。知らない方が幸せだ」

「長は気付いていたようだぞ」

「知っているのは、日本神話系ヴァリアントと『組織』それぞれのトップだけだ」


 二人も知っていたのだとすると、おそらく他にも知る者はいるだろう。

 情報とはそういうものだ。


「頼まれても言うつもりはなかったがな」

「それでいい」


 オレの言葉にスサノオは小さく笑った。


「僕にも親のまねごとみたいなことができたかな」

「なんだ、親になりたかったのか?」

「そう聞かれると困るな。興味があったのは確かだけどね」

「そう思えるならきっと、オレよりも人間的な親心をもってるさ」

「そうか……キミは優しいね」

「どうだかな」


 いい人、なんて言葉はなんども言われてきたけどな。

 きっとそれは前に、『都合の』という単語がついていたのだろう。

 だからブラック企業なんかでこき使われることになったのだ。


「あんたは言うほど非情じゃないように見えたけどな。他のヴァリアントとは随分違うみたいだ」

「変わり者だとはよく言われたけどね。人間だった頃の記憶と、ヴァリアントになってからの欲望。

 この複雑な精神状態がいったい何なのか見極めて見たかった。

 だけど、どうやらもう時間がないみたいだ」


 スサノオの生首が、ボロボロと崩れていく。


「キミの妹に最初で最後のプレゼントをしても良いかい?

 そんな資格はないとわかってはいるのだけど」

「あんたの娘だ。好きにしろ」

「娘……。そう言ってくれるのか、ありがとう」

「勘違いするなよ。あいつの親は、オレの両親だ」

「わかっているさ……キミとはもっと色々話してみたかったんだけどね。残念だ」

「オレはこの世から一人でもヴァリアントが減ってせいせいするが」

「僕のことを『一人』と数えるところに、キミの優しさと甘さが見えるね」

「忠告はありがたく受け取っておくよ」

「賛辞のつもりだったんだけどね。さあ、時間だ。じゃあね……さよなら……だ……」


 紫色の砂となったスサノオの首から小さな光が生まれ、ふらふらと双葉の方へと飛んでいく。

 その光は双葉の胸にすっと吸い込まれていった。


 命を捨ててまで双葉を護ったんだ。

 あんたは間違いなく、父親だったよ。



ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


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