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6章:オレの義妹が戦い続ける必要なんてない(15)

 体が動くようになったオレはまず、双葉に触れて魔力を送り、止まりかけていた内臓を正常に動かした。

 よし、これなら後遺症も残らない程度だろう。

 魔力で抵抗していたオレよりも、症状が軽いのは不思議だが。

 次に、剣にためていた魔力を解放する。

 柄から伸びた光の剣は、分厚い透明壁と結界ごと、長を切り裂いた。


 袈裟斬りにされた長の下半身はぼとりと地面に落ちたが、上半身は断面から伸びた無数の触手で支えられている。

 さながら想像画に出てくる火星人である。


「身の丈に合わない力を振り回すからそうなる」

「ぐぐぐ……だが、この強化アクリルは突破できまい!」


 オレが防護壁に向かって一歩を踏み出すと、つま先がそこになにもないかのようにアクリルへと吸い込まれた。

 体に纏った熱で、アクリルが蒸発しているのだ。

 オレは分厚いアクリルの壁を溶かしながら、長へと近づく。


「な、なんだその力は……来るな! 来るなあ!」


 長はスサノオに斬り落とされた腕から伸びる触手をオレに向かって振るう。

 しかしその触手は、オレの体に触れる直前に蒸発する。


「なんて熱量だ……。それでいて、体表面から離れると熱を感じないだと!?」

「バカだなあ。熱を外に漏らしたら、双葉が暑がるだろ。大事なスサノオへの人質であり、実験対象なんだろ?」


 オレの言葉に、長の顔が僅かに引きつった。


「そ、そんなことはない!」


 その態度だけで、もう認めているようなもんだ。


 オレは長が放つ魔力弾を全て無効化し、触手を一本ずつ斬り飛ばしていく。


「な、なんなんだその力は。そうか、貴様もヴァリアントとの合成体なんだな!」

「そんなわけあるかよ」

「人間がそんな力をもてるわけがない! ひぃ! それ以上近づくな!」

「さっきまでの尊大な態度はどこへ行ったんだろうな」

「わ、悪かった! 妹は帰す! だから、命だけは助けてくれ!」


 そんな姿になっても命乞いか。

 特殊能力さえなければ、実力で敵わないことくらいは理解できたらしい。


「双葉を殺そうとしたよな?」

「してない! 本当だ! あの娘は大事なじっけ――」


 慌てて口をつぐんだがもう遅い。


「もう一度同じことを言え。そうすれば命は助けてやってもいい」

「ほ、本当だな?」

「気が変わってもしらんぞ」


 オレは人差し指を長の額へと突きつけた。

 同時に剣で肩を刺し、脅すことも忘れない。


「ぎゃああ! わ、わかった! 言う、言う! 二度とあんたの妹に手は出さない!」

「監視は?」

「監視もつけない! 部下に徹底させる!」

「妹だけじゃだめだ。オレとオレの知り合い全部にだ。オレと双葉の情報を政治家達にも売らないと誓え」

「する! 約束する!」

「よし、契約完了だ」


 怯えた長がそう言うと、オレの指と長の額の間に展開された魔方陣が、しわくちゃな額へと吸い込まれていった。

 これで契約完了である。


「契約を破ろうとすれば、その頭が吹き飛ぶ。これは脅しじゃない。わかったな」

「わ、わかった!」


 長が返事をしたのを確認すると、オレはその首を撥ねた。

 すぐさまその切り口に状態保持の魔法をかけ、スサノオが保存されていた液体へと放り込む。


「き、きさま!」

「なんだ? 文句でもあるのか? 生かしてやっているだけありがたく思うんだな」

「ぐぐぐ……」


 長は悔しげに顔を歪ませるが、双葉への扱いを考えれば生ぬるいくらいだ。


 契約は自分が有利な立場を作ってから結ぶこと。

 そのためには相手をまず叩きのめし、少しだけ譲歩をしたかのように見せたり、こちらがいないと生き残れないと思わせるのも効果的だ。

 モンスターをボールに捕まえて戦わせるゲームで、モンスターを従わせるために瀕死になるまで痛めつけるようなものである。

 ブラックリーマン時代にさんざんやられたことだ。

 こんな役立て方はしたくなかったけどな。


「その首にかけた魔法、オレが定期的に更新しないとお前は死ぬからな。せいぜい気をつけることだ」

「なん……だと……」


 これでよし。

 契約が上手くいかないようなら殺すしかないと思っていたが、この方が双葉の安全を確保するには良い。


 あとはスサノオだな。




ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


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