6章:オレの義妹が戦い続ける必要なんてない(14)
「合成……能力か……」
長の指先から伸びた触手に浸食されはじめているスサノオがゆっくり口を開いた。
「そうさ。複数のヴァリアントが持つ能力を体内で合成することで、極稀に強力な能力が発現する。
キミの首を手に入れたときは震えたよ。
これほど強力な力を持つヴァリアントだ。合成したらどうなるのかとね。
今朝実験しておいてよかったよ。早起きは三文の得とはよく言ったものだ」
腕のヴァリアントが合成機で、胸と額のヴァリアント、そしてスサノオの能力を合成しているってわけか。
狙って組み立てられるような技術じゃない。
おそらく、強い合成ヴァリアントを作る過程でできた偶然の産物だろう。
「手に入れた……か……」
スサノオがにがにがしく呟いた。
「安心したまえ、キミを殺しはしない。あとで脳細胞を少々頂くがね。なあに、死にはせんよ。人格がどうなるかは知らないが」
これはヴァリアント側にも教えていない、『組織』側の秘密だろうか。
いや、もしかすると『取り引き』だったのかもしれない。
そんなことより、重要なのはオレと双葉にかけられている術を解くには、スサノオか長のどちらかをどうにかしなければならない。
まずいぞ。
双葉には長の術がなぜか効きにくいようだが、それでももう保たない。
この術を解く方法は、手持ちにいくつかある。だが、そのどれもが、余波でこの基地を中心に周囲が焼け野原になる。
くっ! あちらではパーティーバランス的に、火力優先で修行したからな。
搦め手の得意な仲間がほしいところだ。
たが、ないものねだりをしてもしかたない。
双葉は気を失い、膝をつき、床にゆっくり倒れる。
優先すべきは双葉だ。
やるしか……ないのか……!
「す……せり……」
双葉を見たスサノオが何かを呟いた。
たしか神話におけるスサノオの娘の名前だったか?
「くっくっく。かつての娘と同じ名前などつけていたのか」
同じ名前を『つけた』? まさかコイツ……。
そうか。長が双葉をカードと言った理由がわかったぞ。
「ワシよりよほど人間らしいわ」
そう言う長の顔は内側からぼこぼことふくれあがり、すでに人とは思えない姿になっている。
本人はそのことに気付いておらず、カラカラと笑い続けている。
もう飲まれてやがる。
「人間らしい……か……。こんなことをするのも……そうなのか……」
スサノオの首から魔力が迸る。
とても死にかかっている生首から出る量じゃない。
これは……死ぬぞ!
「剣よ!」
長から伸びる触手を焼き尽くしたスサノオの呼びかけに応じて、虚空から草薙の剣が現れ、長の肘から先を斬り飛ばした。
スサノオの首がぼとりと地面に落ちる。
よし、体が動く!
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