5章:ドラッグ オン ヴァリアント(34)
神楽殿の入口に立っていたのは、妹の双葉だった。
なぜだ! ヴァリアントには人払いの効果があるはず!
「まだ僕にも運が向いてますね! 全員動くなよ!」
炎の剣を再び出したカグツチが双葉につきつけようとする。人質にとるつもりか!
くっ……ヤツが一番双葉に近い。
双葉を人質に取られたら厄介極まりない。
オレは脚部だけ、体内魔力の速度を3倍化する。
筋肉がブチブチの引きちぎれる激痛が走るが、気にしている場合ではない。
背後に魔力を爆発させて、さらに加速をする。
ここからだと、飛び道具は双葉を巻き込みかねない。
炎の剣が双葉に突きつけられる前に割って入る!
こちらは十歩の距離、カグツチは剣を向けるだけ。
オレの方が圧倒的に速いとはいえ、ギリギリ間に合わないか!?
これらは全て、瞬きにも満たない時間――
オレが飛び出したのと同時、床に落ちていた草薙の剣が高速で飛び、カグツチの腕を切り落した。
スサノオがやってくれた!
オレにカグツチを倒させるためだろうが、助かったのは事実!
双葉とカグツチの間に割り込んだオレは、まず双葉に防御結界をはりつつ魔法で気絶させた。
次に、二本目の炎の剣を出したカグツチの腕を斬り飛ばす。
「くっ――」
慌てて下がるカグツチだが、そこには既に由依がつめている。
「はっ!!」
神器を起動した由依のミドルキックが、カグツチの腰に突き刺さった。
両断こそできないものの、移し身の直前を叩けたのはでかい。
「おのれ!」
移し身の発動に失敗したカグツチが僅かによろめいた。
まだ足下のおぼつかない由依はその場に尻餅をつくが、今の一発で十分!
オレはカグツチを一刀両断。
そのまま細切れに切り刻んだ後、消滅系の魔法で死体を塵にした。
炎を操る神は、焼くと再生される可能性があるためだ。消滅系魔法は、扱いが繊細で魔力消費が激しいがしかたない。
魔力枯渇により、強い脱力感が襲ってくる。
さすがに疲労が激しいが、まだ終わっていない。
オレは双葉を優しく床に寝かせた後、首だけになったスサノオと、床に転がる草薙の剣に警戒しつつ、杉田へと近づいた。
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