5章:ドラッグ オン ヴァリアント(30)
由依の声にギリギリ反応できたオレは、振り下ろした剣がスサノオの額に触れる直前で止めた。
力を使い切ったスサノオは、元の姿に戻った。
草薙の剣が通った後には、はっきりと力の痕跡が残り、魔力の空白地帯となっている。
なんつー威力だ。
ノケモノの槍もびっくりである。
オレはスサノオに剣を突きつけたまま、魔力で空中に氷の鏡を作り出し、背後を見た。
まだ目の焦点の定まらない由依は、ふらつきながらもずり下ろされた黒タイツを履き直している。
先程のスサノオの一撃が髪を掠めた際、彼女にかかっていた魔法も解けたのだろう。
スサノオは両腕を再生するため、傷口に魔力を集中させようとするも、先程の大技の影響で、上手く傷を治せすにいる。
3倍化を使った上に右腕の骨が粉々になったオレも似たようなものだ。
それでも、あと5分もすれば、腕は再生できるだろうが。
「はぁ……はぁ……私を捕まえたのは……その人じゃにゃい……」
クスリの効果か、快楽に耐えるように顔を紅くした由依が、声を絞り出す。
「どういうことだ?」
「あなた達は何故戦っているにょ? 人間とヴァリアントであること以外の理由があったはじゅよ」
まだろれつのあやしい由依が、ふらふらとこちらに近づいてくる。
「由依がこいつに捕まったと聞いたからだ!」
「コイツがクスリをばら撒いているからだ!」
オレとスサノオの声が被る。
「「なに!?」」
「オレはそんなことしてない!」
「俺もだ」
「だが、実際由依の黒タイツを脱がそうとしてただろ!」
「この神社をクスリの保管庫にしていただろ!」
どういうことだ?
全く話がかみ合っていない。
「やっぱり……誤解がある、というかハメりゃれたみにゃいね。私を捕まえたのは――危にゃい!」
由依が叫んだ瞬間、肉色の燃える帯にスサノオの首が斬り飛ばされた。
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