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5章:ドラッグ オン ヴァリアント(28)

 オレは体内魔力回路を流れる魔力の速度を、2倍から3倍へと上昇させた。

 体表面に近い血管が浮き上がり、目から血が流れ出す。

 本来なら全ての臓器や血管に至るまで、魔力で補強しておくところだが、さすがにまだ体の再構築が間に合っていない。

 日々代謝し続ける細胞を強化しきるには、まだ時間が必要だ。

 だが、今はそうも言っていられない。

 多少の無理は承知の上だ。


 オレの変化を見たスサノオもまた、大剣を背中に背負うように構え、力をため始めた。

 一撃で決めるつもりだろう。


 オレが床を蹴ると同時に、スサノオは天に向けて剣を突き上げた。

 ただでさえ巨大な剣から光が伸び、神楽殿の天井を貫いた。


 バカな!

 戦いながら神楽殿にかかっていた魔法を解析していたが、『ここにありながらここにない』とも言える、極めて特殊な術式だ。

 人間には干渉不能な領域によるものである。

 喰った者に関する記憶を世界から抹消するというヴァリアントの特性。

 おそらくそれを拡張して組まれたものだ。


 スサノオが口の端を持ち上げ、鋭い牙を剥きだしにした。

 草薙の剣が神楽殿の天井を斬り裂きながら振り下ろされる。

 避けるのは簡単だ。

 だが、剣の軌道上には、由依が吊されている。

 あの野郎、それをわかってて!


 技の特性を解析している余裕はない。

 あの光に触れただけでどうなるかもわからない。

 だが、防ぎきればオレの勝ちだ。

 こんな大技を放てば、いくらスサノオとはいえガス欠だろう。

 既に彼の体はあちこちヒビが入り、乾いた絵の具のように体表面がぱらぱらと剥がれ落ちている。


 3倍状態のオレなら、いくらあの質量とスサノオの力で振り下ろされた剣だとしても、受け止めることはできる。

 問題は光の部分だが……。

 あの光は触れたモノの存在を否定する性質を持っているようだが、神楽殿の屋根を『斬り砕きながら』オレに迫って来る。

 術式は否定するが、物質はパワーで押し切っている?

 それなら――!


 オレは剣を腰だめに構え、右手の筋力強化に全魔力を集中させた。

 草薙の剣が、天井から吊されている由依の手に届こうとしたその時、オレは全力で剣を振り上げた。


 剣どうしが触れた瞬間、魔力をごっそり削られ、右腕の骨が粉々に砕けたのを感じるが、気にしている場合ではない。

 ロードローラーを成層圏の外までぶっとばせるくらいの力がこめられた一撃は、草薙の剣の軌道を僅かに逸らせただけだった。

 だがそれで十分!


 オレが由依に張った結界を易々と断ち切った草薙の剣は、その風圧で揺れた由依の髪をひと房斬り、床へと突き刺さった。


 がらがらと砕けた屋根が床に落ちてくる。

 音を消す魔法も同時に斬られているようだ。


「うおおおおおおお!」


 骨が粉々に砕けた右腕から、左手に剣を持ち替え、大技後でわずかに硬直しているスサノオに斬りかかる。

 最優先でスサノオの両腕を肩から斬り落とす。

 これでヤツは剣を使えない。

 いくらヤツの魔力がほぼ尽きているとはいえ、油断は禁物。

 そのまま体を一刀両断しようと剣を振り上げたところで――


「だめよ! カズ!」


 オレを止めたのは、由依の叫び声だった。


ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


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― 新着の感想 ―
[一言] 「だめよ! カズ!」 オレを止めたのは、由依の叫び声だった。 そんな声、無視してさっさとスサノオを殺してしまえと思う。
[気になる点] >技の特性を解析している余裕はない。 >術式は否定するが、物質はパワーで押し切っている?  それなら――! これは特性を解析しているのでは?
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