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5章:ドラッグ オン ヴァリアント(16)

「今日は解散にしようか」


 オレ達はビルの谷間にある公園まで逃げてきた。

 ベンチで一息つくと、真っ先に立ち上がったのは杉田だった。


「いいや、ちょっと待ってくれ」


 オレは杉田を引き留めた。

 彼には確かめておきたいことがある。


「あんなに人が倒れてたのは異常だよ。幸い俺達は大丈夫みたいだからさ。人に見られる前に離れた方がいいって」


 杉田が言うことはもっともに聞こえる。

 だが、この状況なら自分の体も心配になって当然のはずだ。


「自分はこの先、倒れないという確信でもあるのか?」

「……なにが言いたいんだ?」


 杉田の顔が曇る。


「あんた、オレ達に言ったこと以外にも、知ってることあるんじゃないか?」


 考えてみれば、クラブの噂を知っていたことも怪しい。

 かなり能動的に調べるか、もともと裏社会に繋がりがないと、そうそう知り得る情報ではないはずだ。

 ヴァリアント側もエサを釣るために多少の情報はバラまいていたはずだが、そこまでおおっぴらにやっていたとも思えない。


「……わかったよ。今日はこんなことに巻き込むつもりじゃなかったんだ。その詫びも含めて話す」


 杉田は再びベンチに座ると話し始めた。


「オレには高校時代からつきあってた彼女がいてな。大学を卒業したら結婚するつもりだったんだ」


 ギリッと奥歯を噛みしめた杉田は、これまでにないほど、悔しさに顔を歪めた。


「けど、彼女はあっけなく死んだんだ。あのクスリのせいで……。

 オレはちょうど大学の論文作成で忙しくて、彼女と連絡をとれない時期だった。論文を終えて彼女の部屋に行ったときには、もう手遅れだったよ

 クスリ漬けにされてたんだ。

 彼女が自分から手を出したりするはずない。

 彼女のことを好きだった男の逆恨みだったと俺は思っているが、証拠は出なくてね……」


「そんな……」


 由依が思わず口を覆った。


「だから俺は、彼女を殺したクスリだけでも、違法なものとして認めさせたいのさ。警察も動いているかもしれない。でも、俺自身でも何かしたかったんだ」


 ふむ……。

 筋は通っているといえば、通っている。


「キミ達をエサに使ったことは謝る。この通りだ」


 杉田は深々と頭を下げた。


「そんな俺が言うのもなんだが、キミ達もクスリになんて手を出さない方が良い。それとも、何か事情があって調べているのかい?」


 オレと由依は思わず顔を見合わせた。


「やっぱりそうか。ジャンキーや考えなしにクスリに手をだすようなコ達にはみえなかったからね。事情を話してくれる気は?」


 杉田の問いに、オレは黙って首を横に振った。


「そうか。しょうがないね。でも、情報交換だけはさせてもらえないかな。連絡先の交換くらいならかまわないだろう?」

「それくらいなら」


 オレ達は杉田と電話番号を交換し、その場を離れたのだった。


ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


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[気になる点] ちょっと、あっさりし過ぎてる気がするな
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