表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/426

1章:異世界から戻ってきたと思ったら、十七歳の頃だった(4)

 こちらに戻ってきて初めての夜。

 オレは月の裏側にいた。


 どこまで異世界で身に着けた能力が使えるか試すためだ。

 こちらの世界でそうそう強力な攻撃魔法なんかを使うとも思えないが、街でからまれたときにうっかり相手を殺しました、なんてことになっては笑えない。

 力をどこまで使わないようにしなければならないか、その把握も重要なことだ。


 とりあえず、宇宙空間に出ても問題ない物理バリア、本来は水中呼吸用の空気圧縮、透明化、大気圏突破するための高速飛行あたりは問題なく使えた。


 さて、何を試そうか。


 いくら月の裏側とはいえ、地球から観測されては面倒だ。

 念の為、地球側からは見えないよう、視覚を含めた物理幻想阻害の魔法を、月の直径より少し広い範囲にかけた。

 これで地球から観測されることはまずないだろう。


 準備を終えたオレは肩をポキポキ鳴らすと、掌に魔力を集中した。

 すると、爪の先ほどの黒い球体が生まれ、ゆっくり膨らんでいく。


 こちらの世界でも魔法が使えることは実証済みだ。それは、『オレが扱える』だけでなく、この世界が魔法という現象に対応していることを意味している。

 リンゴは木から落ちる。

 そんな当たり前が、当たり前には起こらない世界もあるのだ。

 オレが転生していた世界とこちらの世界は、どうやら近しいことわりで動いているらしい。

 それでいて、こちらの世界ではあまりにも魔法が発達していないのは不思議だが。


 オレは手の中で拳大になった黒い球体を眺めた。


 これができるということは、こちらの世界にも魔力は満ちているということだ。

 簡単な魔法なら、人の中にある魔力で発動できるが、これくらいのものとなると、空間に存在する魔力なしには成立させられない。


 オレは黒い球体をそっと前へと押しだした。

 宇宙空間で距離感がつかみにくいが、音速を遥かに超える速度でそれは前進し、やがて月の大きさに等しい闇を振り撒いた。

 星の瞬きのない黒が、眼前に広がり、やがてもとに戻る。


 星すら消し去る極大魔法だ。

 人間相手に使うことなどないし、破壊力が大きすぎて取り回しにくいが、神と戦うには必要だったものだ。


 空間にある魔力は、あちらの世界と同程度だな。

 これだけ魔法が広まっていないように見える世界にしては、魔力が濃すぎる。

 通常、その世界で魔法が多く使われるほど、世界に魔力は満ちていくものだ。

 このあたりは魔法とは何かという話まで踏み込むので今はおいておく。

 いくつか理由は考えられるが……。

 ここで何を考えたところで妄想にすぎないな。


 ひとまず実験は成功だ。

 オレが向こうの世界で習得した『技術』は全て使うことができる。

 あとは肉体だが、これはぼちぼち鍛えていけばいいだろう。

 こちらの世界で命がけの戦いなんて、そうそうおきるはずもない。


 今日のところは……


「んっ――!」


 オレは魔力を使い、全身の筋肉を細かく断裂させ、瞬時に回復魔法で修復した。

 全身に激痛が走るが、これだけで一ヶ月はがっちり筋トレをしたくらいの効果がある。

 これを何度か繰り返すと、全身がほどよく引き締まった。

 プロスポーツ選手程度にはなっただろう。

 ひとまずは、自分の魔力に耐えられる程度の肉体にはなった。


 腹減った……。

 いくら魔力で補っても、これをやると大量にカロリーを消費するんだよな。


 向こうの世界の時とはリーチも変わってるからな。

 近接戦闘の訓練もしたいところだが、それは明日にしよう。

 別にそこまでする必要もないのだが、敵に備えられていない状態というのは、なんとも落ち着かない。


 帰るか……。

 そう思った直後、由依につけていた危機探知魔法に反応があった。

 夕方、由依の様子がおかしかったので、念のためつけておいたものだ。

 彼女の周囲で敵意が膨れると、オレの脳に直接通知が来るようになっている。


 発動することなどないと思っていたが、何がおきている?


 オレは月から地球へと、飛び降りた。

ここまでお読み頂きありがとうございます。


本日は何度か更新しますので、続きもお楽しみに!


ぜひブックマーク、高評価よろしくお願いいたします!

(この下にある★5をぽちっと)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 地球から見えなくても周回している衛星やステーションからは丸見えなのではないかな?
[一言] とんでもない能力もちだった(笑) これリアル世界でどこまで暴れるか、展開が難しいと思う
2021/02/05 05:37 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ