4章:パパ活ですか? いいえ、援交です。(16)
ロキ達を撃退した翌日。
クラスはちょっとした騒ぎになった。
遅刻してきた鬼まつりが、ノーメイクかつ黒髪だったのだ。
スカートは相変わらずパンツが見えそうなほど短いが、靴下は学校指定のものだ。
髪型も耳の下でゆるりと結ぶタイプのおとなしいおさげになっている。
正直、かなりかわいい。
こいつ、濃いメイクを取ると、こんなにかわいかったのか。
『見た目は』の話だが。
「まつり!? どうしたの!?」「ルーズ同盟の誓いは!?」
鬼まつりの取り巻き達が、登校してきた彼女に駆け寄った。
「ちょっとごめんね」
まつりは二人をかわすと、オレの方へとやってきた。
「あんた、お昼は白鳥さんと一緒でしょ? まつりもまぜてくれない? その、昨日のお礼もした――いたたたた!?」
まつりは頭をおさえてうずくまった。
うむ。呪いはちゃんと効いているようだ。
「まつり大丈夫!?」「いろんな意味で!」
とりまきギャルがまつりに駆け寄ってきた。
「ど、どうなの?」
清純派美少女が上目遣いでお願いしてくる。
一瞬くらりときそうになるが……。
「だが断る」
「「「だがって……?」」」
近くにいた由依も含め、全員が首をかしげた。
ジュジュの奇抜な冒険は、この頃すでにファンは多かったものの、まだファンだけのものだったか。
ネットでネタだけが広がる前か。
そもそもこのギャルに通じたか怪しいが。
これではまるで、ダメなオタクである。
そのまんまかもしれん……。
「とにかく断るってことだ。鬼まつりと一緒に飯を食べるつもりはない」
「そっかぁ……そうだよね……。あと、鬼まつりじゃなくてまつりね……」
鬼まつりは律儀に呼び方を訂正しつつも、がっくりと肩を落として自分の席へと戻って行った。
ギャル二人はそんな鬼まつりを心配しつつ、こちらを睨み付けてくる。
自意識過剰でなければ、鬼まつりはオレを狙いはじめたのだろう。
それが、吊り橋効果的なことなのか、そうすれば護ってもらえると思ったのかはわからないが。
あれだけ怖い思いをしておいてよくやるものだ。
逆に感心さえしてしまう。
いずれにしろ、相手にする気はない。
トイレでの出来事は、由依から聞いた。
多少改心したのだとしても、そうそう許すつもりはない。
クラスにとって大きなできごとは、鬼まつりの変化だったが、オレと由依にとっては、そんなことよりずっと大きな事件がその日起きた。
「急遽入院された山田先生の代わりに現国を担当します、鳴山です。非常勤ですが、放課後もしばらくは学校にいますので、わからないことがあったら聞きにきてくださいね」
そう自己紹介をしたのは、見覚えのない教員だった。
彫りの深い顔立ちにあごひげがよく似合う、ダンディーな男性だ。
三十代前半とのことだが、もう少し若くも見えるし、ものごしはもっと年上にも見える。
主に女子達が黄色い歓声を上げたが、オレはそれどころではなかった。
ヤツの目を見るまで気づけなかった。
ヴァリアントだ。
ここまでオレに気付かせずに接近するとは、ただ者ではない。
そして授業中、ヤツはオレに笑顔で言った。
「昨日はお世話になったね。これからもよろしく」
この非常勤講師――スサノオだ。
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