22章:ヴァリアントスレイヤー(12) SIDE 由依
SIDE 由依
ボスと同タイプのヴァリアント達は、すでに死体を吸収済みで、10メートルを超える巨体になっている。
「そんな……」
私の体は動かない。
体力も魔力も限界を超えている。
神器の発動もできない。
どんなに体を起こそうとしても、ぷるぷる震えるだけだ。
ヴァリアントの一体が、私を鷲掴みにした。
そのまま持ち上げ、握りつぶそうとする。
「ぐ、あああああ!」
魔力で強化したはずの全身が軋む。
人間の体など一瞬で握りつぶせるだろうに、私が悲鳴を上げるのを楽しんでいる。
もう一体が双葉ちゃんへと向かう。
だめ……。
それだけはだめぇ!
私はグングニルに残っていた魔力を解放した。
ヴァリアントの手が弾け飛び、落下した私はなんとか着地する。
しかし、それが正真正銘最後の力だった。
グングニルの制御に残してあった魔力を使ってしまった。
「んくっ……うぅ……ああああっ……」
言いようもない不快感が下半身を襲う。
何かが脚の中から這い上がってくるような感覚。
グングニルが暴走を始めているのだ。
全ての神器レプリカは、それ自身を制御するために一定量の魔力を蓄積している。
それを使ってしまえば、こうなることはわかっていた。
普通の使用者では、そもそもそのリミッターを外すことはできない。
カズとの修行で魔力の扱いが上手くなった私だからできたことだ。
頭上から巨大な手がゆっくりと迫る。
意識が遠のいていく。
ああ……これで本当に終わってしまう。
ごめんねシスティーナさん、双葉ちゃん。
ごめんね……カズ……。
カズと一緒に……幸せになりたかった……な……。
……。
…………。
私の体を襲うはずの激痛がやってこない。
あぁ……もう死んだのかな……?
そう考えていると、体がぼんやりと温かくなっていくのを感じた。
グングニルの暴走も引いていく。
ゆっくり目を開けると、そこにはシスティーナさんの背中があった。
「なんだか長い夢を見ていたみたい。由依の呼ぶ声が聞こえた気がしたの。二人とも、私のために傷ついたんでしょう?」
システィーナの声は悲しみに溢れている。
顔は見えないが、ものすごい威圧感だ。
「私の友達に手を出して……ただですむと思わないことデス!!」
システィーナさんの魔力が溢れ、その周囲に百本を超える紅い剣が生まれた。
剣は飛び回り、ヴァリアントを斬りさいていく。
双葉ちゃんも無事だ。
よかった……もう……だいじょう……ぶ……。
私の意識はそこで途切れた。
皆様にご好評いただいた本作も、残り2話で最終回となります。
最後までお楽しみに!
新作「異世界転生した先の体にゲス魔王の魂が封印されていた」の投稿を始めました。
こちらもよろしくお願いします!
なぜかえっちくなってしまったので、R18での投稿になります。
なぜかね、なぜか。
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