22章:ヴァリアントスレイヤー(4) SIDE 由依
SIDE 由依
私と双葉ちゃんは、カズが封印されているスタジオに到着した。
「はぁ……はぁ……それで、他のメンバーはどこに……?」
双葉ちゃんは肩で息をしながら、床にチョークで魔法陣らしきものを描いている。
ここまで私達は数百のヴァリアントを倒し、一気に駆け抜けて来た。
さすがに魔力の残量がきつい。
ここまでの経路とこの入口には、双葉ちゃんが神域絶界を展開してくれている。
私もかなりカズに鍛えてもらったつもりだけど、魔力量は双葉ちゃんに敵わない。
「美海ちゃん、着いてる?」
「はい。ここにいます」
スタジオの入口に、神器を発動してバニーガール姿となった美海ちゃんが現れた。
私と双葉ちゃんが安全を確保した後を、透明化してついてきたのだ。
彼女の他に透明化していたのは4人。
鬼瓦さん、冷泉さん、華鈴さん、そして赤崎君の座った車椅子を押す青井さんだ。
これで双葉ちゃんを除いて7人が揃った。
「その方々はもしかして……」
双葉ちゃんとは面識がない人もいるよね。
でもごめん、時間がないんだ。
「みんなカズが命を助けた人達だよ」
「でも、赤崎さんはたしかお兄ちゃんの魔法で氷漬けだったんじゃ……」
「うん。心臓がなくなっちゃったけど、白鳥が人工心臓を提供したんだ。手術はちょっと前に終わってたんだけど、なんとか外出できるようになったのが今日なの」
「難波には一生返せないほどの恩がある。体はまだ動かないが、なんでもするさ」
まだ顔色の悪い赤崎君がニヤリと笑って見せる。
そんな彼を青井さんが愛おしげに眺めている。
この二人は、赤崎君が復活した時に記憶が戻っていた。
思い出さない方がよいこともあった二人だけど、一緒に乗り越えると決めたらしい。
「ここにカズさんがいるんですの……?」
華鈴さんは暗いスタジオを見回している。
「あの……私はなぜここに連れてこられたのでしょうか? 強引に攫われて、マネージャーが行けというからついて来ましたけど……」
一方、最も不安げなのは冷泉さんだ。
彼女だけカズに関する記憶まで消えてしまっているのだから無理もない。
「由依さん……攫ったって?」
双葉ちゃんがジト目を向けてくる。
「しょ、しょうがないでしょ! 急いでたんだから! でも、このまま記憶が戻らなくても大丈夫なのかなあ?」
縁がどうとかいう理屈だと、もしかして効果ないんじゃ……。
「大丈夫です。儀式を始めれば、一時的に思い出すはずです。……よし、準備できました」
由依ちゃんが描いたのは、直系5mほどの魔法陣だった。
複雑な模様だが、円の内側に内接する小さな円が7つ。
そして、その中心に一つの円がある。
その中心に立った由依ちゃんの指示で、私達は7つの円に入った。
双葉ちゃんが聞き慣れない呪文を唱える。
すると、魔法陣が強く輝き出した。
体中の魔力が吸われていくのを感じる。
「ん、んん……っ!」
「なにこれ……」
「あはっ……気持ちいぃ……」
「くっ……」
双葉ちゃん以外の全員が身もだえる。
一分ほどだろうか。
全身から汗が噴き出した頃、目の前が真っ暗になった。
ここまでお読み頂きありがとうございます。
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