22章:ヴァリアントスレイヤー(3) SIDE 由依
SIDE 由依
私と双葉ちゃんは、カズが封印されているテレビ局の正面エントランスにやってきていた。
「本当に正面突破するんですか?」
双葉ちゃんが少し不安げに聞いてくる。
「美海ちゃんには別にお願いしたことがあるからね。それに、中の気配でわかるでしょ?」
「ヴァリアントだらけ、ですね」
「だったら蹴散らしちゃってもいいよね」
私は神器を起動する。
「ですね」
双葉ちゃんはリュックから取り出した呪符を構えた。
すると、エントランスにいた局員達が一斉にこちらを向いた。
目がらんらんと輝き、魔力が膨れあがった。
全員が低鬼タイプのヴァリアントへと姿を変える。
このテレビ局、完全に乗っ取られている!
「いくよ双葉ちゃん!」
「はい!」
私はグングニルによる飛び回し蹴りで、手近にいたヴァリアントの首を斬り飛ばす。
そのままの勢いで壁を蹴り、吹き抜けの上にある廊下へと降り立った。
左右をヴァリアントに挟まれる形になるが、右、左と蹴りを繰り出すことでヴァリアントの胸を吹き飛ばす。
一方、下では双葉ちゃんが投げた呪符がヴァリアントを紫の煙へと変えていく。
あらかた片づいたと思ったところで、吹き抜けの上にあるガラス天井を割って、大量のヴァリアントが降ってきた。
私は両足を広げ、頭を真下に向けた形で回転する。
プロペラのように高速回転する脚からは、魔力の刃を飛ばす。
スピニングプロペラキックとでも名付けようか。
それにより降ってきたヴァリアントは細切れにされていく。
討ち漏らしたヴァリアントは、下から双葉ちゃんが投げる呪符が的確に処理していく。
今度こそ、エントランスには静寂が訪れた。
私と双葉ちゃんは頷きあい、階段を駆け上がる。
待っててね、カズ!
SIDE ヒミコ
「この埋め立て地を中心に、東京の半分は落ちました」
部下がそう報告してきた。
軍が動く気配はない。
私利私欲と己かわいさに自国を売り渡したバカな政治家どもは、約束を守っているようだ。
他の地域では小競り合いが起きているようだが、そちらはどうとでもなろう。
ヴァリアント側が勝てばよし、負ければこの『国』で面倒をみてやれば主導権を握ることができる。
北欧組のヴァリアントにはぜひ負けてほしいものだ。
奴らを従えることができれば、世界のヴァリアントの力関係は大きく変わる……。
テレビでは、我が国に好意的な意見が多く流れていた。
妾達は差別されていた人種として報道されていた。
建国という言葉には拒否感を示されているものの、自治区を認めるだとか、人権がどうとか、バカな議論がなされている。
そうなるよう裏で取引きがすんでいるとも知らずに。
ふん、愚かなことだ。
そうして妾達を舐めているうちに、足をすくわれるが良い。
スサノオは我らが弱いなどと言っていたが、最終的にモノを言うのは個の強さなのだ。
少しずつ世界を切り取ってくれる。
ナンバカズを封印できた今、本気になった妾達に勝てる者などおらぬ。
地下に『畜産場』もできた。
奴に縁ができる前に封印できたのは僥倖だった。
縁の数が足りていないことに気付かなければ、ナンバカズが死ぬまで計画を実行できないところであったわ。
まさか1年やそこらで、あれほど強い縁を集めるとはな。
だが、システィーナはこちらの手にある。
仮にナンバフタバ以外に儀式のできる者がおったとしても、7人には1人たりぬだろうよ。
さて……。
ナンバカズの仲間が動いたか。
妾を狙わず、ナンバカズの復活に賭けるか。
たとえ7人集められていたとて成功率は低いというのに、人数不足ではな……。
くくっ……悲しいことよ。
ナンバカズ抜きで妾に勝てる見込みなどないのだから、当然よの。
国盗りの準備は不十分であったが、結果として良い形に落ち着きそうだ。
「侵入者は始末しておけ」
部下にそう命じる。
もはやナンバカズの仲間達に遠慮をする必要はないのだから。
長年の悲願が叶う。
この世界をヴァリアントの手に!
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