22章:ヴァリアントスレイヤー(1) SIDE 由依
■ 22章 ヴァリアントスレイヤーズ ■
SIDE 由依
リビングのテレビからは、先程のヒミコによる演説が繰り返し流れている。
「システィーナさんが自分の意志でヴァリアントの女王になるはずないわ!」
私の発言に美海ちゃんと双葉ちゃんがそろって深く頷いた。
「洗脳か何かされてるんでしょうか?」
おそらく双葉ちゃんの言う通りだろう。
「もしかして、芸能界へのスカウトもシスティーナさんを女王にするために?」
「たぶんね」
「だけどなぜシスティーナさんなんでしょう?」
美海ちゃんが首をかしげた。
「彼女の体が半分人間ではないからよ。たぶんね……」
『核』を埋め込まれ、人ではなくなりつつあったシスティーナさん。
カズのおかげで普通に暮らしているけれど……。
とても嫌な予感がする。
「世界を……支配する気かもしれない……」
「はは……そんなどこかの魔王みたい……な……」
笑いとばそうとした美海ちゃんだけど、その言葉は消え入りそうなほど小さかった。
彼女もわかっているのだ。
これまで影に潜んで生きてきたヴァリアント達がこれほどの動きを見せるのが、どういうことなのか。
「何はともあれ、カズを助け出さないことには何も始まらないわ」
私は双葉ちゃんに視線を送る。
しかし、カズを助ける方法がわかったにしては、表情がしぶい。
「師匠によると、お兄ちゃんと縁の深い7人を集めて、お兄ちゃんが封印されている場所で儀式をすればもしかしたらって……。普通は無理だけど、お兄ちゃんほどの魔力量があればいけるかもしれないって」
「そんなことがわかるって、双葉ちゃんの師匠って何者なの?」
「私もわかりません。対ヴァリアント組織の日本支部から紹介されただけなので。もうお歳で戦う体力はないですが、世界でも有数の知識を持っているそうです」
どちらにしろ他にアテもないし、やってみるしかないか……。
「縁の深いって、具体的にどういうことでしょう?」
美海ちゃんがぽそりと呟いた。
たしかに……。
「命のやりとりや危機に関するほどの強い関係で、ヴァリアントが関わっているとよいそうです」
「ハードル高くない!?」
私、双葉ちゃん、美海ちゃんはいいわよね。
あと4人もいる?
当然、生き残ってないとダメだよね。
「ええと……、鬼瓦さんに、声優の冷泉アイさん。果樹園での件があるから華鈴さんもいけそうよね。あと一人がぁ……」
「あたしは儀式をしなきゃいけないので、あと二人ですね」
「あ! 太平洋で一緒に訓練をしたアクセルさん達は!? これで揃うんじゃない!?」
さっそく私は白鳥家パワーを使って彼らに連絡をとってみる。
…………
……
「由依さん、どうでした?」
電話を終えた私に双葉ちゃんが聞いてくる。
「ダメだったわ」
「そんな……なぜ!?」
「世界中の対ヴァリアント組織が襲撃されているらしいの」
「「え!?」」
「ヒミコ、本気だわ」
「お兄ちゃん……」
双葉ちゃんがぶるりと震えた。
でも他に心当たりなんて……あった!
「あと二人、いけるかもしれないわ」
「本当ですか!?」
「ええ、ちょっと賭けになるけどね」
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