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21章:トゥルーヴァリアントショー(9) SIDE 由依

SIDE 由依



「助かったわ、双葉ちゃん」


 双葉ちゃんが神域絶界を展開してくれたのだ。

 景色は同じだけれど、隔絶されたこの空間の外と内では互いを見ることができない。


「準備してましたから」


 さすがカズの妹さんだ。


「しばらく待ってから出ましょう」


 向こうからこちらのことは見えないが、こちらからも同じだ。

 神域絶界を解いたら見の前に人がいた、なんて事態は避けたい。

 まぁ手そうなったらなったで、相手を気絶させて逃げよう。

 カズを助けるためなんだからしょうがないよね。


 せっかくなのでこの時間を使って探索をと考えたところで、ノイズが入ったように景色が乱れた。


「何今の?」

「神域絶界が……干渉している……?」


 双葉ちゃんが眉をひそめ、あたりを見回した。



「どういうこと?」

「わかりません。そう感じるとしか」


『由依……ふ……ば……み……るのか?』


 そこに局の遠いAMラジオのような雑音とともに、カズの声が聞こえてきた。


「カズ!? いるの!?」

「お兄ちゃん!」

「カズ君!」


『すま……ドジ……しんい……かい……出られな……』


「ここに閉じ込められてるのね!?」


『そ……気をつけ………………』


「お兄ちゃん!?」


 それからは、たまにノイズのような音が聞こえるだけだ。


「おそらくお兄ちゃんは、ここに神域絶界で閉じ込められているのだと思います。術者が中にいないので、倒して抜けるという手段が使えないのかと。同じ場所で展開された神域絶界同士が干渉したとも考えられますが……」

「また向こうと繋がる可能性は?」

「よほど運がなければ……。繋がったとしても、先程くらいが限界だと思います」

「そう……」


 思わず下を向いてしまうけど、そうじゃないよね。

 カズは生きてるんだ!


「神域絶界って、長く展開することは難しいんじゃ?」


 いつかとけるなら、ここで待てばいいのでは?


「私はそうですけど、ヴァリアントがどうかはわかりません。近くに術者もいませんでしたし、何か特別なことをしてるんじゃないかと思います。既に何日も経過してるでしょうから、待っていて解けるとは……」


 双葉ちゃんは冷静に見えて、手が真っ白になるくらい、拳を強く握りしめている。

 中学生とは思えない強さだ。


 私がもっとしっかりしなきゃ。


「なんとかしてカズを助けよう」

「もちろんです」


 双葉ちゃんは虚空を見つめたまま頷いた。


「でもどうすれば……。神域絶界って、物理現象じゃないって前に聞いた気がするんだけど」


 美海ちゃんの言う通り、解決案は思い浮かばない。

 自然と私達の視線は双葉ちゃんに集中する。


「私もわかりません……でも」

「でも?」


 何か希望があるの?


「私に符術を教えてくれた師匠なら何か知ってるかもしれません」


 師匠なんていたんだ。

 そりゃあ全部独学でできたわけないもんね。


「わかったよ。じゃあ双葉ちゃんは師匠のところに。私と美海ちゃんは、他にできることをしよう」


 私達は頷きあった。


 絶対に助けるからね、カズ!



ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


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