21章:トゥルーヴァリアントショー(6)
神域絶界の中というのは、考えようによってはちょうどいい。
状況的に考えて、絶界を張ったヴァリアントは、この20人の中にいる。
ここなら多少派手に暴れても問題ない。
オレが剣を構えると、ヴァリアント達は一斉にその姿を化け物へと変えた。
口が後頭部まで裂けた神官もいれば、首から大量の蛇を生やした獅子まで、その様相は様々だ。
寄せ集めにも見えるがはたして……。
まず飛び出して来たのは、西洋風の鎧に身を包んだ騎士だった。
速い!
剣士としてもかなりの腕だ。
その剣を切り飛ばそうとするも、しっかり受けられれてしまう。
おいおい、名のある騎士だろこいつ。
そんな中、背後にいた神官が黒い雷撃を放つ。
彼の手から伸びた雷は、オレと騎士を包み込む。
味方ごとかよ!
オレは剣で雷を絡めとり、そのまま騎士を斬りつける。
雷に耐えながらも攻撃の手をゆるめない騎士は、オレの一撃で上下に真っ二つになった。
残り19。
ヴァリアント達は遠巻きにオレを囲み、様子を見ている。
中には魔力を高めている者もいる。
ヴァリアントをランク分けするのは難しいが、全員が中級クラス以上に見える。
それがなぜ、こうも一箇所に集まっているのか。
しかも、和洋入り乱れたメンツである。
何かの集会でもあったのか?
「噂以上だな……」
誰かがぽつりと呟いた。
オレだと知っていて襲ってきた?
どういうことだ?
とりあえず、ここを出ないことには始まらない。
オレはヴァリアントの集団に斬り込んだ。
かなりの強敵達だったが、残るは一体。
「どういうつもりだ?」
最後のヴァリアントは、カメラと融合した個体だ。
他のヴァリアントに護られながら、じっとこちらを撮影していた。
今さら、この程度のオレの戦いを録画したところで、分析という意味ではどうにかなると思えない。
では何かの脅しに使えるかと言われればやはりNOだ。
ヴァリアント達は、自分達のことが世間に広まるのを良しとしていない。
個体数が少ない以上、世にバレない方が生きていくのに都合が良いからだ。
世間にオレのことをバラすという脅しは自爆行為である。
それに、政治ともつながっているようだし、その積み重ねを今さらご破算にすることはないだろう。
なにより、こいつを逃がすつもりはない。
オレが距離をつめようとしたその瞬間――
ヤツの首から上の空間が歪み、頭部が消失した。
首から紫色の鮮血が吹き出す。
なっ!?
自殺した!?
まさか、映像を神域絶界の外に送るために!?
ヴァリアントの体が煙となって消えると、神域絶界もまた解かれた。
いや、解かれてない!?
というより、今まで閉じ込められていた神域絶界を覆うように、もう一つ神域絶界が展開されていた……?
戦いの最中に外から展開されたのか。
やられた。
最初からオレを閉じ込めるために仕組まれていた。
いつからだ?
オレが今日ここに来ることが決まったのは、昨日の話だ。
あれだけの人数を用意できていたんだ。
オレの動きを事前に把握できていたに違いない。
候補は無数にありそうだ。
なぜオレを閉じ込めたかっただが……。
それこそ、ヴァリアントの恨みを買った覚えはいくらでもある。
オレを倒すのは無理でも、なんとかして封印しようと考えるヤツが現れてもおかしくはない。
問題はどうやってここを脱出するかだ。
オレがこうなったということは、由依たちにに危険は及んでいないだろうか。
背中を冷たい汗が伝った。
ここまでお読み頂きありがとうございます。
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