21章:トゥルーヴァリアントショー(1)
本章のラストから、大きくお話が動きます。
お楽しみに!
■ 21章 トゥルーヴァリアントショー ■
今日は白鳥家の道場で、由依と双葉の戦闘訓練だ。
限界まで体と魔力を酷使した二人は、床に大の字になっている。
「はぁ……はぁ……近接戦闘は専門外なんだけど……」
特に双葉の披露が激しい。
「符術がメインでも、不意に距離をつめられた時の対処方法は覚えておいた方がいいぞ」
「それは……そうなんだけど……きっついねコレ……」
「ふふふ……この程度で音を上げるなんて……だらしないね、双葉ちゃん……はあはあ……」
「そういう由依さんだって……指一本……動かせない感じじゃないですか」
「わ、私は……双葉ちゃんよりキツい訓練……だから……」
対抗意識があるのは良いことだ。
競い合えば伸びるからな。
オレは二人の額に手を置くと、回復魔法をかけると同時に、魔力を送り込んだ。
「んんっ!」「あ……あぁ……っ」
二人は訓練で紅潮した頬をさらに赤らめる、身をよじる。
義妹が快楽に喘ぐ姿を見るのはたいへん微妙な気持ちになるのだが、こればっかりはしょうがない。
いや、由依のは役得とか思ってるわけでもないけどな?
「回復したか?」
「したけど……」
「つまり続けるってことだよね……?」
「もちろんだ」
オレの笑顔に、二人はげんなりした顔を作って見せつつも、さっと立ち上がる。
後半戦開始と構えたところで、道場の扉が開いた。
入ってきたのは、道着姿のシスティーナだ。
メイドとして買い出しに行っていたはずだが、帰ってきたらしい。
「休憩時間なのデ、私もまぜて」
それじゃあ休憩にならんだろうという気もするが、雪山で本人の希望と雪山での覚悟を聞いてしまった以上、断るつもりもない。
「ひゃー、さすがシスティーナ。こりゃかなわないよ!」
汗だくになった由依は、道場の床にぺたんと腰を下ろした。
「神器を使われたらかなわないのはこちらだヨ」
そう言うシスティーナは汗一つかいていない。
スタミナのなさ故、疲労はかなりのものなようだが。
訓練中、システィーナは由依と双葉を見事に手玉にとっていた。
体が覚えているというやつだろうか?
由依は生身でもプロの格闘家に勝てるほどの実力がある。
雪山から帰るなり、オレの訓練を受け始めたシスティーナは、かつての技術を思い出したかのように、めきめきと実力を伸ばしていた。
それでもなお、今日の彼女の動きは、どこか精彩を欠いていた。
「システィーナ、何かあったか?」
オレはシスティーナに白鳥家特性ドリンクを渡しながら聞いてみる。
「え……? なんデ?」
「動きがいつもと違ったからな」
「気付いた?」
「いいえ……」
由依と双葉はシスティーナの動きについていくのに必死だったので、気付かなかったのも当然だ。
ここまでお読み頂きありがとうございます。
続きもお楽しみに!
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