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20章:私達をスキーに連れてって(1)

 ■ 20章 私達をスキーに連れてって ■



「どう? きれいにできたでショ?」


 メイド服を着たシスティーナが、掃除機片手にオレの部屋で得意げにしている。

 バチカンの一件から弱っていた彼女だが、こうして白鳥家のメイドをできるくらいには回復していた。

 心臓もオレの魔力に慣れてきたようで、補給は3日に1度で問題ない。

 用心は必要だが、閉じ込めておくのも彼女の人生によくないだろう。

 そろそろどこかに連れて行ってあげたいところだ。

 観光したいところもあるだろうしな。


「家事はお手の物だな」

「デショ!」


 ベッドですまなさそうにしていた彼女が、こうして笑顔になれただけでも大きな進歩だ。


「そろそろ修行始めちゃウ? お姉さん強くなるヨ」


 ヴァリアントに関する記憶をなくしている彼女だが、簡単な説明はしてある。

 なんせオレや由依と深く関わる上に、一人で見知らぬ土地に来ているのだ。

 下手に探られて危険な目に合うより、ある程度正直に伝えておいた方が良いと判断したからだ。

 なにより、オレからの魔力供給を受けてもらうのに、何も説明しないというわけにはいかなかった。


「修行はしないって。ヴァリアントと戦うには普通の人間じゃ難しいんだ」

「ええ? 私も役に立ちタイよ」

「逃げられるくらには訓練するからさ。まずはそれでいいだろ?」

「んー……わかった、いいよ。きっとすぐにすごい才能が開花して、一緒に戦えるようになるカラ!」


 記憶はないけど、元バチカン最強の戦士だからなあ。

 可能性がないとは言わないが、できればそんな才能とは無縁のまま穏やかに過ごさせてやりたい。

 あれだけ悲惨な思いをしたんだ。

 贅沢などではないだろう。


「訓練もいいが、遊びに行ったりしたくないか? せっかく日本に来たんだし、観光って手もあるぞ」

「んー……それじゃあネ……スキーに行きたいナ」

「スキーって、雪山で板に乗るあれか?」

「そう! テレビCMで見て、行ってみたかっタの」


 この頃、ブームは終わりを迎えていたとはいえ、まだまだウィンタースポーツとしてスキーはメジャーだった。

 スノーボードが人口が増えたこともあり、未来に比べてメディアでの露出も多かった。

 この冬は世界的に大きなスポーツ大会が長野で開かれたこともあって、ちょっとした盛り上がりを見せていたのだ。


 しかしスキーかあ。

 腕前を見せてやると張り切ったバブル世代の上司に、無理やり付き合わされた思い出しかないんだよな……。

 その上司は足を骨折してたけども。

 当時は部下一同、「ざまああぁっ!」と思ったものだ。


「あまり寒いところに連れて行くのはまだ体が心配だが……温泉もあるだろうし、体が辛かったら湯治だとでも思えばいいか」


 スキー場は当然山にあるわけで、温泉宿とセットになっていることも珍しくない。


「温泉! いいネ!」

 

 お気にめしたならよかった。


「私も行きたい!」


 そこへ扉をばーんと開いて乱入してきたのは由依だ。


「盗み聞きは感心しないぞ」

「ドアに耳を当てていたら、たまたま聞こえたのよ」


 たまたまとは?


「もちろん行くならみんなで行くさ」

「やった! じゃあみんなの道具をそろえなきゃね」

「レンタルでいいだろ」


 そう何度も使うとは思えない。


「こういう時こそしっかりお金を使わなきゃ。それがお金持ちの義務ってものよ。それに、使わなくなったら寄付でもすればいいんだし」


 この辺の発想はさすが白鳥家だ。

 オレにはない考え方である。




ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


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