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4章:パパ活ですか? いいえ、援交です。(11)

 鬼まつりの首根っこを掴んで持ち上げたリーマンは、彼女を盾にして、その陰に隠れている。


「ロキ! よせ!」

「ふんっ、臆病なんだよ、スキールニルは」


 ロキと呼ばれたリーマンが、宅配業者の言葉を鼻で笑った。


 ロキ……たしか、北欧神話で世界の終末をもたらすと言われる神だ。

 変身能力もあるとか。


 スキールニルという名前は聞いたことがないが、名前の雰囲気から察するに、北欧神話系だろう。

 

 隣で神器を起動させた由依がデザートイーグルを構えているが、ロキは上手く鬼瓦を盾にしている。

 銃の弾は効かないはずだが、それが神器かもしれないと警戒しているのだろう。


「まずは顔をみせろ」


 ロキが右手の中指にはめた金色の指輪が輝くと、オレと由依の顔にかけていた認識阻害の魔法が解けてしまった。

 あちらの世界で、こういった搦め手は他のメンバーに任せていたため、あまり得意ではない。

 とはいえ、そこらの魔道士に解かれるようなものではないはずだが……さすが神か。

 あの指輪がヤバイ感じだな。


「難波に白鳥……? ひっく……お願いたすけて! トイレのことは謝るから! だからぐぇ――」

「静かにしてろ」


 鬼まつりの首をつかむ手にロキが力をこめると、鬼まつりは潰れたヒキガエルのような声を上げて黙った。

 彼女の手足はガクガク震え、涙と鼻水で濃いメイクはグチャグチャ。

 スカートの下からは液体がぽたぽたと垂れている。


「トイレのことって?」

「陰湿なアレソレよ」


 由依の短い答えだけで、なんとなく把握した。

 こんなヤツを助けるべきか迷うところだが、ヴァリアント達を倒さなければならないことに変わりはない。


「できるなら助けましょう」


 そんなオレの心情を察したのか、由依は静かにそう言った。


「わかった」


 被害を受けたであろう由依がそう言うなら異存はない。

 顔見知りを見捨てるのも寝覚めが悪いしな。

 世界の命運を背負っているわけじゃないんだ。

 手の届く範囲で助けられる命を助けるという『らく』をしたっていいだろう。

 助けるよりも、切り捨てる方が辛いことを、オレはよく知っている。


「やれやれ、人間に擬態して上手くやってたんだがな」


 そう言ったロキの肉が内側からぼこぼこと膨らんだりを繰り返し、その姿を変えた。

 もとはやや小柄な冴えないサラリーマンが、180センチを超える、さわやかな細マッチョイケメンに変化した。


「ふぅ……久しぶりだが、やはりこっちの体の方がしっくりくるな。よっ!」


 グルグルと肩を回し、体の調子を確かめていたロキが、無造作に拳を突きだした。


 ――ドガァ!


 顔の横を風が吹き抜けたかと思うと、背後のコンクリート壁に人が通れるほどの大穴があいた。


「け、拳圧だけで?」


 それを見た由依が身震いする。


「いっけね。あんまり目立っちまうと、食事がしにくくなるな」


 ロキの指輪が光ると、ビルの内側が魔力の壁に覆われた。


「結界か」

「へえ……あんた、魔力が視えるのか」

「ビルの保護に防音、ついでにオレ達を逃がさないための結界ってところだろ」


「やぁっ!」


 ――ぐわんっ!


 神器を起動した由依が壁を蹴るも、コンクリートの表面に光の波紋が浮かぶだけだ。


「コンクリートくらいぶち抜ける強さで蹴ったのに……」

「そっちのお嬢さんもなかなかだな」


 ロキはどこか楽しそうに笑みを浮かべた。


 こいつ、かなり強い。

 特に右手の中指にしている指輪が予想通りやばいな。

 レプリカではない、本物の神器というヤツだろう。


「俺は楽して勝つのが好きでね。とりあえずもう少し下がってもらおうか」


 人質も取られているし、由依に任せるのは危険か……。


「由依、鬼まつりを頼むぞ」


 オレはそう言うと、片手にトールの時にも使った剣を取り出しながら、ロキへと突っ込んだ。


ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です。 [一言] 奇遇ですね。 私も楽して勝つ、あるいは楽して結果を出すのが好きです。 余ったリソースは別の事に使いたいです。
[一言] うーん? なんであいての要求に従うのかが分からん。
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