17章:美女とヴァリアント(14)
SIDE カズ
喧騒に包まれたデモ現場は、夕方になっても人が減るどころか増え続けていた。
…………。
……………………来ない。
オレの予想では、スィアチが様子を見に来た上で、目立つ行動を取るはずだった。
朝からデモを開始していたのは、由依に頼んで集めてもらったサクラ達だ。
むろん、デモのリーダーを含めてである。
こうしなければ、次にスィアチは人間を半殺しにする姿をメディアの前に晒すと考えたからだ。
それだけは避けなければならない。
一時的にせよ、世界中は大混乱になるだろう。
最悪、人間とヴァリアントとの全面対決などということになったとしたら、どれだけの犠牲が出るか。
スィアチの狙いが全面戦争でないのは、初手でアナウンサーを殺したことから明らかではある。
だからといって、スィアチが全面戦争を避ける理由もないかもしれない。
どうも自分の都合だけで後先考えずに動いている気がするのだ。
そうした暴走を防ぎつつ、スィアチをおびき寄せる一石二鳥の作戦だったのだが……。
オレの読み違いか?
現場に集まって来た中で、ある程度高い魔力を持っているのは、組織の者と思われる神器持ちと、ヒミコの部下らしきヴァリアント達だ。
そんな連中ばかり集まるものだから、逆にヴァリアントの存在を感知しにくくなってしまった。
多くが周囲に気を配り、不審な動きをしているため、やってきたのがスィアチがどうかわからないのだ。
この状況で、完全にヴァリアントとしての気配を消されれば、発見は難しいだろう。
とりあえず怪しい動きをしているヤツを見つけるしかないか。
◇ ◆ ◇
そうこうしているうち、夜になってしまった。
「なにもおきないわね」
さすがの由依や双葉の緊張感も、丸一日となるともたないようだ。
「オレの予想では、初日から様子を見に来ると思ったんだがな」
「明日も続ける?」
由依が「うーん」と腕組みをしている。
「今のところ他に方法もないからなあ」
ヒミコ達も手詰まりなのだろう。
彼女の部下達がだんだんここに集まってきているからな。
他にやりようがあるなら、そうはならないだろう。
「手をこまねいている間に、スィアチが何かやらかさないかが心配ね」
「そうなんだよなあ」
スィアチが行動を起こしてくれないことには、根城探しを続けるしか、今のところ手はない。
ならば、とれる手段はとっておいた方がいいだろう。
「明日以降もよろしくたのむ」
「おっけ。まかせといて」
笑顔でサムズアップする由依。
実に頼もしい相棒だ。
「いや……もしかしたらその必要はないかもしれないな」
「え?」
オレは一体のヴァリアントが、ここにやってきてすぐ離れていくのに気付いた。
ヒミコの部下が様子を見に来たにしては帰るのが早すぎる。
姿こそテレビに出ていたスィアチとは異なるものだが、あのまま人前に現れるようなマネはしないだろう。
特に様子見であればだ。
追ってみる価値はありそうだ。
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