17章:美女とヴァリアント(13) SIDE スィアチ
SIDE スィアチ
ゲームの全エンディングを見終わった頃には、すっかり日が暮れていた。
結局一日中、音だけのゲームをしていたことになる。
終わってみれば、最初のプレイ以外は全てバッドエンドだった。
男性主人公が犠牲となって彼女を助けるエンディングに、少女はとても感動していた。
どこにそれほど泣くところがあったのかさっぱりだ。
自分が死んではなにもならない。
少女目線からすると、自分を助けてくれたということになるのだろうか。
それにしたって、少女の言う「失いたくない」相手が死んではどうしょうもない。
そんな少女は、ソファで寝ている。
その穏やかな寝顔を見下ろしていると、耐え難い食欲が沸いてきた。
朝に十分な食事をとったはず。
本来なら数日は食べずとも保つはずだ。
それだけこの少女が魅力的ということだろう。
それと同時に、この少女をもう少し見ていたいという気持ちもある。
これまで喰ってきた人間とは違う反応をするからだろうか。
もしくは、一緒にいてくれるからだろうか。
だが、いくら一緒にいてくれても、所詮は食料だ。
人間もペットを飼ったりするらしいが、それに近いだろうか。
人間の気持ちなどわからないが。
なにはともあれ、喰えば無くなってしまう。
それはもったいない気がしてくる。
つまりこれが恋ってことか?
美味そうものを喰えないなら、恋ってのはめんどうなものだな。
しょうがない。
とりあえず、メシを喰いに行こう。
せっかくだから、ブギーマンデモをしている連中からみつくろってやろうじゃないか。
オレに喰われるなら本望だろうしな。
◇ ◆ ◇
……と思ったのだが。
なんでこんなに強そうなヤツがごろごろいるんだ?
特に、高校生ぐらいの3人がヤバい。
人混みに隠れた上に、魔力を抑えている。
だがオレにはわかる。
やつらがハンパではない強さだということが。
この勘でオレは、ヴァリアント狩りと余計な戦いをせずに生き延びてきた。
オレはすぐにその場を後にした。
他のヴァリアントどもは臆病だなんだと言うだろうが、知ったことか。
自分達だって、人間に化けて生活しているだろうが。
しかたなく場所を繁華街に移し、適当な人間をみつくろって貪った。
たしかに腹は満たされた。
だが、あの少女を喰いたいという気持ちは、おさまるどころか膨らむばかりだった。
ここまでお読み頂きありがとうございます。
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