17章:美女とヴァリアント(10)
SIDE カズ
テレビ局での事件から一夜が明けると、報道は様変わりしていた。
『ブギーマン』という単語が見出しを席巻しているのだ。
街頭でブギーマンコールをする若者がブラウン管に映し出されている。
まだ朝だというのに、街頭には千人規模の集団ができている。
アナウンサーはしきりに殺人犯のニックネームとしてつけられたその名を連呼し、テレビ局内で殺人事件が起きたことを報道し続けていた。
殺人犯は政治に不満を持ったサラリーマンということになっていた。
焦点は5%に増税された消費税だ。
より不景気に向かうだとか、庶民をいじめるなだとか、ブギーマンは人生をかけて抗議をしたのだとか、わめきちらしている。
その消費税、未来にはもっと上がるんだよなあ。
給料の低いブラックリーマン時代は、家計に大打撃だったのを覚えてる。
「なんでこんな話になってるの? 事件の詳細はぼかされてるのに、ねつ造された主張の報道ばっかり。いつもなら、被害者や犯人のまわりを嗅ぎまわるのに」
フォークに目玉焼きを刺したまま、双葉がぽかんとした顔でテレビを見つめている。
「とりあえずは狙い通りか」
「そうね」
オレと由依は目を合わせ、頷き合う。
「なになに? どういうこと? あたしは仲間はずれかな?」
ぷっくりと頬をふくらませた双葉が、オレと由依を交互に睨む。
「上手く行ったら説明するから」
「二人で通じ合ってる感じがズルいんだってば。ねえ、システィーナさん」
「うん。なかまはずれはわるい」
そこでシスティーナを味方につけるのはずるいぞ。
あと、日本語の上達早いなあ。
「隠すようなことでもないから説明するよ。でも、現場に向かいながらだ」
「現場って……あそこに行くの?」
双葉はちょっとイヤそうにしながら、テレビを見た。
あまり近づきたい光景でないのは確かだ。
「来てくれると助かる」
「ほんと!? いくいく!」
なぜか双葉は「ふふーん」と由依にドヤ顔をキメている。
「私の方が頼りになるよね? ね?」
一方、由依はじっとオレの目を見つめてくる。
「二人とも頼りにしてるってば」
ライバル心は能力の向上に繋がるからいいのだが、ちょっとだけ心労がね……。
ここまでお読み頂きありがとうございます。
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