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17章:美女とヴァリアント(9) SIDE スィアチ

SIDE スィアチ


「なあいいだろ? オレと一緒に遊ぼうぜ?」


 オレがステッキでコンクリートの床をコツコツ叩くと、目の前の女は「ひっ」と声をあげ、腰を抜かしたまま後退った。

 セーラー服のスカートが乱れ、柔らかそうなふとももが露わになる。

 美味そうだが、今は我慢だ。


「なんで逃げるんだよ!」

「ひっ」


 つい声を荒らげてしまった。


「何をそんなに怖がるんだ。一緒に遊んでくれれば、喰ったりはしねえって言ってるだろ」


 コンクリート剥き出しの廃ビルは、たしかに人間には肌寒いかもしれない。

 気を使って盗んできたタオルを敷いてやったし、一緒に遊ぶためのボードゲームまで用意した。

 このボードゲームというものはなにが面白いのかわからないが、人間は好んで遊ぶらしい。


 オレはボードゲームの箱を、ステッキの先で女の方に差し出した。

 やはり女は逃げようとする。


 そうか、オレも座ってやらないと遊べないよな。

 オレは女の前に座り、ボードゲームのフタを開けた。

 

「ほら、遊び方を教えてくれよ。漢字はあまり読めないんだ」

「こないでえ!」


 オレが頼んでいるというのに、この女は泣き叫ぶばかりだ。

 こんなにも喰うのを我慢してやっているというのに。

 そこに散らばっている肉片のようになりたいのだろうか。


 はぁ……人間なら友達になってくれるかと思ったが、やはりだめか。


「なあ、オレに喰われるのと遊ぶの、どっちがいいんだ?」


 こんな質問をするオレを、他の連中は変わり者だと言う。

 腹が減っている時に美味そうな人間を見ると、我慢できなくなるそうだ。

 もちろんその気持ちはオレにもわかる。

 だからちゃんと腹ごしらえはしておいたのだ。

 さっき喰べた化粧の濃い女と違って、この素朴で若い女はとても美味そうだ……あぁ……喰べたい……。

 こいつの美味いところはどこだろうか。

 オレの勘では膵臓だな。

 こいつの膵臓を食べたいなあ。

 は……っ!

 いかんいかん、ここで喰ってしまってはあいつらと同じだ。


「なあってば」


 オレの問いかけに、女は震えるばかりだ。

 こんなに優しくしてやっているのに。


 ボードゲームの箱には、袋に包装された駒やカードが入っていた。

 マニュアルもあるが、めんどくさくて読む気にならない。

 漢字ってやつはなんでこうたくさん種類があるんだ。


「読め」


 オレはマニュアルを女の前に放り投げた。

 女は震える手でマニュアルを取ると、必死に読み始めた。


「ひっく……ひっく……」


 しゃくりあげるほど泣く女の目から、マニュアルに涙がぼたぼたと落ちる。

 あれでは読めてなどいないだろう。


 なんだか面倒になってきた。


 オレがここまでお膳立てをしてやっているというのに、いったいなんなのだ。

 こいつもオレと一緒にいてくれる気はないらしい。


 ならばやることは決まっている。


 オレは女を頭から噛り、その全身を喰い尽くした。

 予想通り膵臓が美味かった。


 仕上げにオレは、自身の魔力パターンを変化させながら、あたりに血をまいた。

 さらに再生力の高い仲間からむしりとって瓶詰めにしておいた肉片をいくつか空間から取り出し、それらをちぎってぶちまける。

 これで、オレの魔力の痕跡はみつけにくくなったはずだ。

 木を隠すなら森の中とはよく言ったものである。



ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


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