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17章:美女とヴァリアント(6)

SIDE カズ


 テレビ局での一件があった夜、オレを含めたいつもの4人は空を駆けていた。

 ビルからビルへと軽やかに飛び移る。


「重くない?」


 オレの背中で美海が囁いた。

 その様子を由依と、その背中に乗る双葉が「むぅ……」と難しい顔をしながら見てくる。

 美海と双葉は、オレと由依より移動速度が低いのでこの編成だ。

 美海は神器を発動すれば短距離ならかなりの速度をだせるのだが、未だに不安定な彼女の魔力を移動で使い切るわけにもいかない。


「美海は双葉より重いから、オレが担当なんだよな」

「はっきり言い過ぎでは!?」

「だって聞かれたから」

「そうだけど……」


 そんなことないよ、と言ってほしい誘い受けには少しお仕置きである。


「私なら重いと言われてもカズの背中に乗りたいな」


 由依のセリフにはどう反応していいかわからんけど。


 定番になりつつあるいつものやり取りをしながら、オレはとある廃ビルの屋上で止まった。


「これで10箇所めだっけ」


 双葉が由依の背中から降りると、ややうんざりしたように呟いた。

 ヒミコから情報を得たスィアチの根城は、これまで全て空振りだった。


「ああ。だが、少なくとも今回は、完全な空振りじゃなさそうだ」


 オレの一言で皆に緊張が走る。

 ビル内には2つの気配がある。


「美海、神器は発動できるか?」

「うん、いけるよ」


 もぞもぞ動く美海の柔らかいものが背中にこすりつけられたかと思うと、彼女の魔力が膨らんだ。

 見慣れたバニーガール姿になった美海は、すたっとオレの背中から降りる。

 ……バニーガール姿を『見慣れた』と言うのもどうかと思うが。


「偵察してくればいいんだね?」

「ああ、頼む。慎重にな。ちらっと中を見たらすぐ戻って来てくれ」


 もちろんオレ一人でできることだが、かわいい子には旅をさせろだ。


「おっけー」


 美海は姿を消すと、屋上から階下に続く壊れたドアをくぐって行った。




 待つこと数分。

 美海が戻ってきた。


「どうだった?」

「人間が2人、がらんとした部屋の中で床やら壁やらを調べていたよ。会話内容からしてヴァリアントとだと思う。ただ、スィアチではなさそう」


 またハズレか。

 空も白み始めている。

 今日はここが最後だろう。

 このまま毎日空振りをするのも面倒だ。

 階下のヴァリアントに話を聞いておくか。


 オレは3人美海の能力で姿を消したまま着いてくるよう指示し、階段を降りた。


 コンクリート打ちっぱなしで、半分以上窓も割れた廃ビルの中には、マイルドヤンキーが2人いた。

 人間に擬態しているが、ヴァリアントだ。


 床のあちこちには黒い染みができている。

 彼らもそれを調べていたようだ。


 古い跡がほとんどだが、1つだけ新しいものがある。

 血の臭いがする。

 おそらくは人間の。


ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


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