17章:美女とヴァリアント(5) SIDE スィアチ
SIDE スィアチ
もしゃもしゃもしゃ……。
ガキンッ!
骨とは違う、金属の歯ごたえ。
ぺっ……。
吐き出してみると、それは指輪だった。
若い女は柔らかくて美味いのだが、よけいなものがジャラジャラついているのはいただけない。
化粧というやつも、どうにも風味を損なう。
それよりも……。
ああ……寂しい……。
食事はみんなで摂った方が楽しいし、美味しいと思うのだが、他のヴァリアント達はそうではないらしい。
集団で行動するのは、あくまで食料を効率よく得るためであるようだ。
誰かオレをかまってくれ。
一人はつまらん。
かといって、食料のためだけに義務でつるむのも辛い。
昔、とあるヴァリアントにこの寂しさを伝えてみたら、鼻で笑われた。
あいつらはみんなそうだ。
きっとオレだけが特別なんだ。
注目してもらえれば、一緒にいてくれる者も出てくるだろうか?
少なくともかまってもらえるはずだ。
そう思ったのに、誰もオレを迎えにきてくれはしない。
オレは廃ビルの窓から通りを眺めた。
テレビ局の一件から一夜明けた朝の散歩道は、実に平和だ。
昨日の午前中、街を歩くのは爽快だった。
皆がオレの噂をしていた。
それがどうだ。
たったの一晩で、全て忘れ去られたみたいじゃないか。
朝のジョギングをする若い夫婦も、犬の散歩をするおばさんも、スポーツバッグを担いだ学生も、オレの話題になんか触れもしない。
チクショウ!
もっとオレを探せ!
もっとオレを語れよ!
ここまでお読み頂きありがとうございます。
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