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16章:ヴァリアント・ザ・オリジネーション(25)

 体内に手を突っ込んで初めてわかる。

 システィーナの体から、無数の異なる種類の魔力を感じる。

 『核』からではない。

 あまりに多くの魔力がまざりあっているので、はたからみると一種であるかのようにみえるほど、ぐちゃぐちゃに混ざっている。

 ドリンクバーで全ての飲み物を混ぜたとして、それを知らずに遠くから見た場合、そういった飲み物としか認識できないようなものだろうか。


 この馴染み方は尋常ではない。

 長い年月をかけて、少しずつ、様々なヴァリアントの肉片などを体に埋め込むなどすれは、この状態を作れるだろうか。

 異世界でも、人間と魔族で似たようなことを実験している奴がいた。


 これが『核』に適応する解だとするなら、そりゃあ適応者が少ないはずだ。

 まず、ヴァリアントの肉片を移植された段階で、肉体が……下手をすると精神も耐えられない。

 どれだけの失敗を重ねたのかは知らないが、最高の成功例であろうシスティーナでさえ、この有様なのだ。


 理論などなく、なんども試した結果、たまたま成功しただけだろう。

 これを成功と言うならだが。


 心の奥から怒りがこみ上げてくるが、今はシスティーナをなんとかするのが先だ。


 オレは両手の中にある心臓を解析していく。

 やはりこの心臓はもう、肉の部分の方が少ない。

 単純に『核』を引き剥がせば、たちまち心臓としての機能を失い、システィーナは死ぬだろう。


 では『核』はどうか?

 心臓の失われた部分には魔力が在る。

 在るとしか形容しがたい何かだ。

 魔力の塊のようであり、渦のようでもあり、ゆらぎのようでもある。

 視覚を指先に繋げ、直接視てみるも、わからない。


 外見は固定化されておらず、物質のようでもあり、そうでもないとも言える。

 人間には、まともに知覚できない何かだ。


 ここからが正念場だ。

 時間がない。


 オレは心臓と同化している核をゆっくり剥がしにかかる。

 といっても、まともに知覚のできない何かだ。

 手術のようにメスで切り離すなんてわけにはいかない。


 まずは10本の指先に小さな魔力を灯す。

 そして、それぞれの魔力パターンを高速で切り替えていく。


 魔力のパターンには相性というものがあり、ごく稀に互いにひかれ合う場合がある。

 磁石のS極とN極のようにだ。


 しかしそれはとても稀な現象であり、理屈も解明されていない。

 だから、取れる手段は総当たりだ。


 5秒経過。


 この間に試せたのは約10億通り。


 オレが手を潜り込ませてあるシスティーナの傷口が治癒していく。

 それに巻き込まれるように、オレの手首が彼女の体と同化を始めた。

 本来なら手首を魔法で護りたいところだが、そこに割く意識と魔力の処理能力が惜しい。


 6秒……7秒……。

 8秒……。


 手首から先の感覚が薄れて行く。


 9秒……見つけた!


 オレの中指に、『核』の魔力が僅かに引き寄せられた。

 右手にその魔力パターンを全力で高める。


 『核』がずるずるとシスティーナの心臓から離れ、オレの右手へと移ってくる。


「ぐっ……」


 右手が鉛のように重くなる。

 鉛などオレにとってはたいした重さではないのだが、ものの例えというやつだ。

 だが、ここで魔力パターンをぶらすわけにはいかない。

 100階建てのビルから垂らした糸を、地上の針の穴に通すくらい繊細な作業なのだ。

 目標をセンターに入れてスイッチを押せばよい程度の簡単なものではない。

 少しでも気を抜けば、システィーナの心臓からオレの右手に移動しかけている『核』は、彼女の体をズタズタに引き裂いた後、暴れ回るだろう。



ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


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