16章:ヴァリアント・ザ・オリジネーション(24)
由依達のサポートを無駄にはできない。
結界に背中を打ち付けられたシスティーナは、痛がるそぶりも見せず、すぐに活動を再開しようとする。
しかし、オレにはその一瞬だけで十分だった。
拘束魔法でシスティーナの四肢を結界に押しつける。
4つのリングで空中に磔になった格好だ。
システィーナは虚ろな目をしたまま、強引に拘束魔法を破ろうとしてくる。
魔法で生み出した光のリングにヒビが入っていく。
わかっちゃいたが、すごい魔力だ。
オレはシスティーナが自由を取り戻す前に、拘束魔法を重ねがけした。
ぴくりとも動けないよう、それぞれの手足に拘束用リングを5つずつ。
これ一つで高層マンションくらいならつりあげられるほどの強度だ。
淡々と手足に魔力を集中させるシスティーナだが、さすがにこれは破れない。
とはいえ、彼女の魔力は無尽蔵。
これまで垂れ流していた魔力を、全身に集中し始めた。
いつかは拘束を解くことができるかもしれないが、その前に彼女の肉体が完全に壊れてしまう。
急がねばならない。
オレはかろうじてその白い肌を隠していたシスティーナの上着をはぎとった。
色々見えてしまうが、そんなことを言っている場合ではない。
まともに思考のできないシスティーナは、当然恥じらうといったこともなく、拘束を解くべく、無表情のまま魔力を高めている。
カルロによって貫かれた胸の傷は完全にふさがっており、傷口すら残っていない。
オレとの戦いでついた細かい切り傷も同様だ。
よくある自己修復能力を高めるタイプの治癒魔法ではない。
肉体を魔力で無理矢理生成、足りなくなった部分を補っているのだ。
ある意味、どんどん人間ではない部分が増えているとも言える。
こういうのはあまり得意じゃないんだが――。
オレは剣を石畳に突き刺すと、手刀の形に構えた両手に魔力を集中させた。
これだけでも、伝説の剣より良く斬れる必殺技たり得るものだ。
オレは両手を合わせ、そのまま指先をシスティーナの胸へと潜りこませていく。
システィーナの胸の中、心臓のあたりでオレは両手の指同士を開き、さらに体内へと手を入れていく。
この間もシスティーナは無反応。
ただオレの拘束から抜けださんと、全身から魔力を放っている。
強烈な衝撃が全身を貫く。
近くで打ち上げ花火を見た時の数千倍といえば伝わるだろうか。
システィーナとオレの間に結界を展開するわけにはいかないので、オレはそれをあまんじて受ける。
そして、由依達に衝撃波がいかないよう背後には結界を張っているため、そちらから反射してきた衝撃波が襲ってくる。
脳すら揺さぶられるが耐えるしかない。
衝撃で手元が揺れないよう、体のブレだけは補正しておく。
肋骨は再生しきっていない。
わるいが、じゃまになるものは優しく砕かせてもらう。
そっと……そっと……届いた!
オレはシスティーナの心臓をそっと両手で包み込んだ。
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