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16章:ヴァリアント・ザ・オリジネーション(23)

 互いの剣が交差するたび、音速を遥かに超えた剣撃は真空の刃を生み出す。

 それがオレとシスティーナの体に、切り傷を増やしていく。


 システィーナの動きを止めるべく、小さな爆発をおこす魔法を使ってみる。

 しかし、彼女の横に直接発生させた魔法は、空間に溢れる魔力に包み込まれ、不発に終わった。


 司祭達が作る空間もまた、システィーナの助けになっている。

 彼女の魔力が結界内に留まり拡散しないため、その濃度を上げる結果になっているからだ。


 少しずつ使う魔法を強力なものに変えてみるが、やはり不発。

 ――いや、発動はしているが、瞬時に相殺されている。


 これ以上威力を上げると、発動した際に由依達を巻き込んでしまう。

 彼女達を結界で護りながらというのも不可能ではないが、それはそれでシスティーナも無事ではすまない。


 今も、斬撃でついた切り傷から、システィーナの体は腐食を始めている。

 肉が腐るのとは少し違うが、過剰な魔力に肉体が負け、形をたもてなくなってきているのだ。

 おそらくこのまま死ぬということはない。

 だが、核の魔力によって動くだけの、ゾンビのような状態になるだろう。

 二度ともとの人格に戻ることはない。

 少なくともオレは、それを生きていると言わない。


 数度の打ち合い。

 そして魔法の不発。


 オレは同じ攻撃バターンを3度繰り返した。

 それも、1/120秒の狂いもなく、まったく同じパターンだ。


 戦闘の重要な要素の一つに『意識配分』がある。

 大雑把に言うと、攻撃に意識を割くほど防御は疎かになる。逆もまた然り。

 互いの隙をつくというのは、意識の隙をつくということでもある。


 しかし、今のシスティーナの意識を逸らすことは不可能だ。

 そもそも彼女は無意識で行動しているからだ。


 本来であれば、駆け引きも何もないそんな戦法は、スピードやパワーなど、基礎的な力がよほ高くなければ成立しない。

 つまり、システィーナの動きはそれほどだということだ。


 オレはシスティーナを殺さないように手加減せざるをえない。

 一方のシスティーナは疲れを知らず、ミスもしない。

 だが、彼女の肉体を考えると、タイムリミットは近い。


 ほんの一瞬でいい。

 システィーナに隙ができれば、試してみたいことがある。 


 またしても魔法が相殺された。

 パターンに入ってから6回目だ。


 司祭達の視線に、僅かな苛立ちが混ざり始める。


 もちろん、オレとて無策でこんなことをしているわけではない。


 そろそろか……。


 オレの8度目の魔法が相殺され、システィーナが上段からの斬撃を繰り出し、オレが身を切ってそれを避ける。

 システィーナの剣は石畳に僅かに触れ、その切っ先が弾かれることなく石畳に切り傷を残したその瞬間――


 システィーナの後頭部を強烈な衝撃が襲い、身を切っていたオレの前を、彼女の体がすっ飛んで行った。


「ナイスだ!」


 美海と手を繋いだ由依が、飛び蹴りの姿勢で空中に現れたのを横目で確認しつつ、オレはシスティーナを追うように床スレスレを飛ぶ。


 この戦いが始まった直後、由依は美海の能力を使って姿を消していた。

 いくらシスティーナがオレに気を取られていたといっても、普通なら早い段階で気付く状況だ。


 しかし、ほぼバーサーカーと化していたシスティーナは気づけなかった。

 これが無敵とも思える彼女の弱点だ。


 オレが同じ行動を繰り返していたのは、由依達がしかけるタイミングをはかりやすくするためだ。

 打ち合わせをしていたわけでもないのに、タイミングはバッチリだった。

 さすが幼なじみである。


ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


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