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16章:ヴァリアント・ザ・オリジネーション(20)

「なぜこんなことをする!」


 オレは声に問いかけた。


『わかるだろう? 彼女はもう危険なのだよ。我々の手に負えぬ程にな』

「自分達で作ったくせに!」

『命は救った』

「なら最後まで責任を持てよ!」

『そこで首を縦に振れるほど、我々は傲慢ではないよ』

「傲慢を辞書で引いてみるんだな」

『彼女が残したデータのおかげで、人類は救われるのだ。失われるはずだった命を有効に使えたことに感謝してほしいところだ』

「だからって……用済みになったら殺すことはないだろう!」

『彼女が犠牲者を増やすのは見ただろう?』

「オレがなんとかする!」

『君ならあるいはできるかもしれん。だが、一時も目を離さぬと言い切れるのか? 一番大事な女がいるのだろう?』


 オレは由依に視線を向けたくなるのをぐっとこらえた。

 ここで見てしまえば、由依は責任を感じてしまうからだ。


「やってみなけりゃわからないだろ!」

『試してみる気にはならぬな』


 奴が言うにはデータは十分集まったらしい。

 もしや、システィーナを自由にしていたのは、データを取るためか?

 犠牲者が出るのをわかった上で?


 もしかすると、大きな視点で見れば、本当に人類のためなのかもしれない。

 だが、そんなことよりオレは、システィーナを優先したい。

 全てを救うだとか、身近な誰かを犠牲にしてだとか、そんな主人公めいたことは異世界で全部すませてきた。

 悪いが、わがままにいかせてもらう。


[う……]


 そんなことを考えていると、システィーナが意識を取り戻した。


[システィーナ!]


 カルロが起き上がった彼女の背を支える。


[うぅ……私……いったい……ここは?]


 システィーナの様子がおかしい。

 苦しそうなのは変わらないのだが、子供っぽさが抜け、いつもより大人びている。


[大丈夫かい、システィーナ!]


 カルロはシスティーナの胸にそっと手を置く。


[カルロ……?]

[そうだよ。わかるかい?]


 カルロはシスティーナの意識を確かめるように、彼女の前で手を振る。


 システィーナはそんなカルロを見て、眉を潜めた。


[あなた、誰?]


 カルロがわからないほど混乱しているのか?


[カルロだよ。弟のカルロだ]

[カルロ……。違う……]

[え?]

[カルロは死んだ!]

[何を言ってるんだシスティーナ。ボクがカルロだよ」 


[システィーナ……? 違う! 私は『セッテ』だ! コードネームで呼ぶな!]


 今まで見せたことのない怒りの表情か、周囲の温度を下げる。

 これは混乱してるだけじゃない!


『カルロ、やれ!』


 オレが気付くのと、スピーカーから声が響くのと、カルロの手がシスティーナの胸を貫いたのは同時だった。


ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


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