16章:ヴァリアント・ザ・オリジネーション(18)
太平洋でおきたことを考えれば当然の結果だ。
カルロの話を聞いた時点で懸念はしていたが……。
[あれ? 寝ちゃってた……?]
システィーナがゆっくり体を起こしながら、目をこすった。
カルロが彼女の手を握る。
[最近よく眠くなるんだよね。もう大人なのに……]
[ちょっとはしゃいで疲れちゃったんだよ]
[そっかぁ……強い体になりたいなあ……]
悲しげにぽつりと言ったシスティーナの頭を、カルロはそっと撫でた。
ヴァリアントが出現する前あたりからの記憶がないのか。
「うっ……」
システィーナは青い顔をして、胸をおさえた。
[痛む?]
[少し]
カルロに笑顔を見せるシスティーナは、小さく早い呼吸を繰り返している。
[ちょっといいか?]
オレはシスティーナのとなりに座り、その手を握る。
[さっきは何を祈ってたんだ?]
少しでも彼女の気を紛らわせようと、話題をふりながら、魔力でその体内を探る。
弱っている体には少し負荷が高いかもしれないが、痛みを和らげる魔法も同時にかけ続ける。
[ええとね……んっ……なにこれ……んっ……]
オレに体内の魔力回路をまさぐられたシスティーナは、体をビクンビクンと震わせている。
カルロに文句を言われるかと思ったが、意外にも彼は黙ってその様子を見ている。
体内を流れる魔力の流れがめちゃくちゃだ。
全身がバラバラになってもおかしくないほどである。
応急処置的に、魔力の流れを整えてやると、頬に赤みがさしてきた。
といっても、本格的な治療を施すには時間が必要だ。
オレはカルロを礼拝堂の隅に連れ出した。
「なあカルロ、システィーナをオレに預けてみないか?」
「まさか治療ができると?」
「『核』が体内にある限り根本的な治療は無理だ。周囲の人間がヴァリアント化するのを防ぐ方法はない」
「そうか……」
カルロは顔を伏せた。
「『核』が心臓と完全に融合してた。というより、人間の心臓はもはやなく、『核』がシスティーナを生かすために、血液を全身に送っている状態だ。『核』から漏れ出た魔力が直接血液に溶けている。システィーナの強さの秘密はそこだな」
根本的に治すには、心臓を取り出すしかない。
だがそれは、システィーナの死を意味する。
人工心臓という手もあるだろうが、彼女の体は、魔力供給なしには生きられない状態になっていた。
半分人間を辞めていると言えるほどだ。
「だが、オレが定期的に体内の魔力回路を整え、魔力の供給をすれば、寿命は延びるはずだ。オレ達みたいに抵抗力のある人間なら、そばにいてやることもできる。友達と自由に遊ぶというわけにはいかないが……」
いやまて。
カルロや『組織』がシスティーナの状態を理解しているなら、なぜ彼女は外を出歩ける?
ここまでお読み頂きありがとうございます。
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