表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

326/426

16章:ヴァリアント・ザ・オリジネーション(10)

 家の中に案内されると、玄関では銀髪の少女が出迎えてくれた。

 黙ったまま、不安げで曖昧に微笑みかけてくれる。

 歳はオレと同じか少し下に見えるのだが、その笑顔はなぜか幼いものに感じた。

 耳の下で切りそろえたショートボブが、どこか背伸びしたようにも見えてしまう。


「姉のシスティーナだ」


 カルロがオレに少女を紹介してくれた。


[システィーナ、彼が今日からうちにとまるナンバカズだよ]


 紹介の後半はイタリア語だ。

 彼女が姉か。妹と言われた方がしっくりくる見た目である。


「すまないね。姉は英語が話せないんだ」


 そうか、なら。


[よろしく、システィーナさん]


 オレはイタリア語で挨拶をしてみた。


 システィーナの顔がぱっと明るくなる。


[よろしく、カズ]


 握手の求めに応じると、小さなその手は思ったより力強く握ってきた。

 うーん、やっぱり年下にしか見えない。


[随分流暢な発音じゃないか]


 そう言うカルロもイタリア語だ。オレがどの程度できるのか試しているのだろう。


[多少は勉強してきたからな。システィーナさんのこともあるし、会話はイタリア語でかまわないぞ]

[それは助かる。それにしたってそれ、けっこう勉強しただろ]

[まあ、一週間くらいだな]

[ははは、謎の多い男だな。今どきはそういうのがモテるのかね]


 カルロは冗談だと受け取ったようだが、嘘ではない。

 時間をみつけて、ちょっとイタリアに飛び、現地の人達と会話をしていたのだ。

 あとは由依達と一緒にイタリア映画を観たりな。

 おかげで由依も少しだけイタリア語を覚えたようだ。


[お姉さんも綺麗な銀髪だな]

[植毛じゃないぞ]

[いや、そんなこと聞いてないが]


 ちょっと気になったのは事実だけど。


[何を言っているのカルロ?]


 ほら、睨まれた。


 システィーナの用意してくれていた夕飯は、見てくれこそあまりよくはなかったが、優しい味がした。

 家庭の味というやつだろうか。


 それからオレ達は、互いの国や学校の話をし、夜を迎えた。


[もうねるぅ……]


 眠そうに目をこするシスティーナが席を立ち、部屋を出ていったのを確認すると、オレはカルロに向き直った。


「どういうことだ?」


 ここからは英語である。

 万が一、システィーナに聞かれても良いようにである。


「どうとは?」

「システィーナのことだ」


 正面からカルロを見つめると、やがて彼は温和な笑みを真剣なものへと表情を変えた。


「気づいたんだね」

「まあな。彼女の体、どうなってる? ヴァリアント……じゃないんだよな?」



ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


ブックマーク、高評価での応援をなにとぞ! なにとぞよろしくお願いいたします!

(この下にある★5をぽちっと)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ