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16章:ヴァリアント・ザ・オリジネーション(2)

◇ ◆ ◇


「それじゃあ、好きなものどうしで4、5人の班を作るように」


 教卓の前で担任がそう言うと、教室内に緊張が走った。


 修学旅行の班決めでこの方法を取るとは、悪魔の所業である。

 ただ、旅行のスケジュールを見る限り、さほど班で行動をする機会は多くない。

 イタリアでの宿泊は、ホームステイになるからだ。

 本校の姉妹校の生徒の家に泊まり、日中もホストファミリーが案内役をしてくれる。


 それでも、一生に一度しかない修学旅行の班決めともなれば一大事だ。

 普段からグループに所属している奴らは、そのまま組むことが多い。

 だが、5人を超えるグループでつるんでいる場合、誰を抜くかで揉めることになる。

 友達少ない連中が困るのはもちろんだ。

 結果として、陽キャの余りと、陰キャの余りが組んで微妙なことになるのは、いつの世も同じである。


 それに加えて、今回はさらに問題がある。


 由依の存在だ。


 クラス全員が、由依の方をチラチラ見ている。

 あわよくば、彼女と同じ班になりたいのだろう。


 先日の席替えで、オレの前になった由依はこちらを振り返ると。


「一緒でいいよね?」

「もちろんだ」


 その短いやりとりに、教室中から小さなため息が漏れる。

 オレと由依が組むのはわかってはいたものの、枠が1つ埋まった事実に対してだろう。

 すでに3人以上になっているグループからすると、由依を誘い難くなった。


 ここで行動力のある連中が席を立った。

 由依を誘うつもりだろう。

 彼らが声をかけてくる前に、オレは少し離れた窓際に座る美海を手招きした。


 じっとこちらを見ながらそわそわしていた美海は、小動物のようにとてとてとこちらにやってくる。

 立ち上がった生徒達はいったん動きを止め、動向を見守っている。


「組むか?」

「いいの?」

「その方がいろいろ都合がいいしな」


 もし旅先でヴァリアント関係で何かあった場合にである。


「よろしくお願いします」


 美海はぴょこんと頭を下げた。

 なんだか動作がよそよそしいのは、クラス中から注目されているからだろう。


「くっ……やっぱりあいつ二股を?」「同じ班に入るってことは、白鳥さん公認なのか?」「旅行先で何をする気なんだ……」


 クラスがざわつく中、他の生徒とは異なる視線を向けてくる奴がいた。


「難波ぁ……」


 情けない声ですがってきたのは佐藤だ。

 もはや涙目である。


 転生前の人生からオタク仲間として仲良くやっていた数少ない友人だし、班は4人からだ。

 何かあったときには正直邪魔というか、最悪一人でほっぽり出すことになるが……。


 オレが由依と美海に視線を向けると、二人とも頷いてくれた。


「いいよ、組もうぜ」

「うわーん! 心の友よー!」


 本当に泣き出しそうな勢いで抱きついてくる佐藤を押しのけつつ周囲を見ると、大抵の生徒達は次の候補を探しに向かっていた。

 次の人気女子は渡辺だが、彼女は女子だけですでにグループを完成させている。


 ここであえて男子を入れないのは、彼女なりの計算だ。

 班に入れるよりも、男子の班と一緒に行動した方が、ハズレだった時に別れやすいし、対象にできる男子が多いからだとか。

 なおこれは、彼女の内緒話をオレの耳が偶然捉えてしまった結果である。


 残るは数人のぼっち達。

 しかし彼らに、由依に話しかける勇気はない――と思いきや、一人の男子生徒が緊張で顔をガチガチにしながら寄ってきた。


ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


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