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16章:ヴァリアント・ザ・オリジネーション(1)

この物語はフィクションです。

実在の団体、役職名等とは一切関係ありません。

本当に関係ありません。

 ■ 16章 ヴァリアント・ザ・オリジネーション ■



 果樹園地下での一件以来、華鈴さんはちょくちょく白鳥家を訪れていた。

 今日も夕食のテーブルを由依や双葉と一緒に囲んでいる。


「やっぱり華鈴さんの梨は美味いな」


 果樹園から直接、摘みたてを持ってきてくれた梨だ。

 しゃくりと噛むと、瑞々しさが口と喉を潤していく。


「私が言うのもなんですが、あんなことがあった場所でとれた梨をよく平気で食べられますわね」


 少しだけ、華鈴さんは引き気味だ。

 じゃあなんで持ってきてくれたんだよと言うかもしれないが、頼んだのはオレだ。

 口には出さないが、これで華鈴さんの胸のつかえが少しでもとれてくれたらと思う。

 彼女がヴァリアントのことをどれだけ覚えているかはわからないが。


 それを察してかは知らないが、由依と双葉も必ず華鈴さんの果物には手を付けた。

 オレの場合、戦場での食料調達でこういったことに慣れてしまったというのもある。

 人や魔物の死体が積み上げられた横で栄養補給をしなければなならないことも日常茶飯事だった。


「ところで、貴男達の学校はそろそろ修学旅行ではなくて?」

「よく知ってるな」

「未来の夫のことですもの。それくらい調べますわ」

「素直に怖いんだが」


 夫になる約束をした覚えもないぞ。


「あら、貴男にも怖いものがありますのね」

「そりゃあな」

「ふふっ……お互いを怖がっているのに惹かれ合うだなんて、素敵なラブストーリーですわ」

「惹かれ合ってもいないが……オレが怖いのか……」

「あそこまで人間離れした力を見せられれば、生物として恐怖を覚えるのは当然ですわ」

「そうか」


 少し残念無念ではあるものの、こう言われるのには慣れている。

 しかし、異世界でさんざん向けられてきた視線と、華鈴さんの目は違うものだった。

 彼女は挑戦的な微笑みを浮かべたまま、ただまっすぐにこちらを見ている。

 怯えた者の目ではない。


「だからこそ、カズが私なしでは生きていけないほど骨抜きにして差し上げますの。そうすれば、私も安心でしょう? 手始めに、経済力と人脈だけで、貴男に並び立てるくらいにはなってみせますから、待っていらしてね」


 そう言って、華鈴さんはウィンクをして見せた。


「これは……今までで一番手強いかもしれせんよ」

「ええそうね……」


 双葉と由依が、ザクリとフォークを梨に突き刺した。

 二人の殺気がすごすぎる。


「行き先はイタリアでしたわね」

「そうだな」

「お土産、期待していますわ」

「華鈴さんが今更欲しがるものなんて買ってこれないと思うぞ」

「カズさんから貰うことに意味がありますの」

「お兄ちゃん、あたしにもわすれないでよ!」

「私も!」


 たまらず双葉と由依がわりこんできた。

 由依は一緒に行くだろ……。


「それから、空港にお見送りに行きますわね」

「来なくていいからな!?」


 修学旅行の見送りに他校の生徒が来るとか、聞いたことがないぞ。


ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


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― 新着の感想 ―
[一言] 「それから、空港にお見送りに行きますわね」 「なんなら、イタリアの空港まで送ることもできますよ。プライベートジェットで」
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