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15章:赤のフォーク(22)

「責任者どこだぁ! 出てこいやぁ!」


 女性を人質にとった形でオレは部屋を出ると、ホテル中に響く大声で叫んだ。

 わざとイキった迷惑客を装う。


 なんだなんだと、いくつかの部屋から女性や客が顔を出してくる。


「おらぁ! どうしたぁ! 責任者ぁ! この女ぶっ殺すぞ!」


 我ながらひどいチンピラっぷりである。

 腕の中の女性は、恐怖でぷるぷる震えている。

 悪いがもう少し我慢してもらおう。


 しばらくわめいていると、廊下の向こう側からがっしりした黒服の男が二人やってきた。

 スーツの膨らみから察するに、拳銃を携帯しているようだ。


 おいおい、ここは日本だぞ。

 あ……前に由依も持ってたな。

 神器を上手く扱えるようになってからは、使うのをやめたようだが。


 顔を覗かせていた女性や客達が、さっと部屋の中へと隠れた。


「こちらへいらして頂けますか?」


 オレの前に立った男達は、丁寧ながらも有無を言わせぬ圧力をかけてきた。

 一般人ならちびるくらいの迫力だ。

 オークくらいはあるだろうか。


「怖い思いさせてごめんな」


 捕まえていた女性の拘束を解くと、彼女は一目散に部屋へと逃げて行った。




 オレが連れていかれたのはホテルの裏口だった。


「責任者に会わせろと言ったはずだが?」

「ガキがイキがったことを後悔するんだな。お勉強だと思いな」


 オレをおっさんに見せる魔法はさっきの女性にかけたものなので、黒服達からは高校生に見えているのだ。

 黒服の一人が問答無用で殴りかかってきた。


 オレはその拳を掌で受け止めて見せる。

 油断しきっていた黒服達だが、ここで驚いて動きを鈍らせるほど素人ではないらしい。

 ニヤケ面をひっこめ、二人の足が同時にオレへと繰り出される。


 蹴られたところで痛くはないが、服が汚れるのはいやだな。

 黒服の蹴りを避けつつ、彼らを飛び越えるように上へと跳んだオレは、二人の首筋に手刀を入れ、気絶させた。


 一人はそのまま寝かせておき、もう一人に活を入れて起こした。


「う……はっ!?」


 気がついた男は、すかさず拳銃を引き抜き、オレの胸目がけて発砲した。

 危機感があるのはいいことかもしれないが、容赦ないな。


 オレは拳銃の弾丸をつまんで止めると、指でピンと弾いて男のほほにぶつけた。

 じゅっと小さな音をたて、男のほほに小さな火傷ができる。


「は……?」


 さすがの黒服もこれには驚いたようだ。

 マヌケ面を晒した男の胸ぐらをつかんで立たせると、その背をビルの壁に押しつける。


「ボスのところに案内しろ」


 黒服の背後にある壁に拳をめりこませた。

 壁ドンならぬ、壁ドゴォである。


「あんた……ボスと同じバケモノかよ……」


 黒服は足をがくがくと震わせながらその場にへたりこんだ。



ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


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