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15章:赤のフォーク(15)

「それはさておき、地下の施設について気になる点が2つある」

「気になる点……ですの?」

「まず一つは、育てるにしても赤ん坊が必要ってことだ」

「さらってきたんじゃ?」


 オレも最初は双葉と同じように考えた。


「たしかに日本中で行方不明者がたくさん出ている。だが、自分の意思で行動できない赤ん坊がたくさん行方不明になると、世間的に目立つはずなんだ」

「そうか、ヴァリアントに喰われたのでなければ、記憶からは消えないし」


 由依の言う通りだ。

 それは赤ん坊のいる家族を食べても同じことだ。

 いちいち、赤ん坊の親戚を皆殺しにするわけにもいかないだろう。


「それに山形は、『ここで生まれて意識もないまま栄養を注入されて育つ』と言っていた」

「ポッドの中にいた人達が、子供を作るとは思えませんわね」


 体外受精は未来ほど普及した技術ではない頃だったはず。

 この施設を維持するだけでもかなりの金がかかるはず。

 人間を培養するポッドなんて、未来の技術にも近い代物だ。

 もっとも、まともに育つ必要はないのだから、薬品と栄養さえ確保できれば不可能ではない……のか?


「安全で手っ取り早いのは自分達で産むことだな……」


 全員が顔をしかめたが、誰も発言はしない。

 おぞましい話だが、魚だって水槽で飼っていると自分の子供を食べたりする。

 今のところこの説が有力だろうか。

 問題は、わざわざ自分でたべるために子供を作るなんてことをするかだが。


「2つ目は、この技術はどこから来たかってことだ。ヴァリアント達が自分で研究したというのも否定はしないが……」

「研究施設を自分達でたくさん持つようなイメージはないわね。そういうのが好きな変わり者はいるかもしれないけど」


 オレも由依と同じ意見だ。

 何よりも食欲を優先する奴らが、辛抱強く研究を続けられるとは思えない。


「華鈴さん、この果樹園ができたのは?」

「2年前ですわ」

「六条グループに医療機器や薬剤系の研究機関はあるか?」

「…………ありますわ」


 まあそういうイヤな顔になるよな。

 さすが華鈴さんだ。

 一瞬首を傾げた由依も、すぐに回答にいきついたらしく、眉をひそめ、華鈴さんの顔を心配げに見た。


「えっと……どういうこと?」


 双葉には少し説明が必要だな。


「地下のポッドには、どう見ても3歳以上の人間もたくさん入っていた。

 果樹園が始まった時期と、ポッドにいた人間の成長具合が合わない。

 それに、妊婦もいたしな」


 もし仮に成長を促進させる方法なんてものがあったとしても、2倍になったりはしないだろう。

 それこそSFの世界だ。

 ヴァリアントにそういった能力を持つ者がいるなら別だが、それ以外の可能性も考えておくべきだろう。


 妊婦は他の人間達と違い、一見異常な育ち方はしていなかった。

 どこかから妊婦をつれてきて、生まれたところでポッドで育成していたということか?

 妊婦の時からポッドに入れて、胎児を『嗜好品』として育成していたのかもしれない。


「なんにせよ、ここの地下は量産施設で、研究所的な場所があったはずだ。

 年齢の高い人間は、ここができた2年前に研究所から運ばれてきたはず。

 そうなると、六条グループの息のかかった何かが関わっていると考えるのが普通だな。

 その研究所が手がかりだ」


「でもって、赤ちゃんと、技術の出所を探して潰さなきゃだね」


 端的に言うと双葉のいう通りだ。

 だがそれは、六条グループに何かしら不利益が発生することでもある。



ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


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