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15章:赤のフォーク(3)

「華鈴さんって、正面からぶつかってくるから好きなんですよ」


 そう言って笑顔になった由依に、華鈴さんはますます顔を赤くする。


「貴女、性格変わったんじゃなくて?」

「もし可愛くなったと思うなら、カズのおかげね」


 由依がぎゅっとオレの腕を抱くと、華鈴さんがオレを睨みつけてきた。


「難波カズさんでしたわね。貴男いったい何者ですの? 白鳥由依とは幼少期以降、ここまで親密ではなかったはず。学業も最近急に伸びましたわね」


 さすがに調べてあるようだ。


「心を入れ替えたんですよ」

「ふうん……答える気はないということですわね。いいですわ。貴男もわたくしのライバルリストに入れて差し上げます。お覚悟なさい」


 何をどう覚悟しろというのか。


「お兄ちゃん、美味しそうな梨があったよ。梨好きでしょ?」


 そんなオレ達の間に割って入ってきたのは双葉だった。

 フォークに刺した梨をオレの口元に持ってくる。


 人前で「あーん」をするんじゃない、と思いつつも梨を口に入れてみる。

 ほどよい甘さと瑞々しさが口内に広がっていく。


「これは美味いな……。これまで食べた中で一番かも」

「わかってますわね! なかなかお目が高いですわ」


 なぜそこで華鈴さんが喜ぶんだ。


「今日出てくるフルーツは、私の果樹園で作られたものですわ」

「私の?」


 六条家うちのではなく?


「ふふっ、そうですわ。私が経営し、時には実際に現場にも出向き、精魂込めて作った果物達ですの。高校生にして既に経営を実践形式で学んでいるのですわ。ばっちり黒字も達成しています。模試では一歩及びませんでしたが、経営者としては一歩先を行かせていただきましたわ! ふふんっ!」


 鼻息荒く、ドヤ顔をかます華鈴さんである。


「わぁ、すごいですね!」


 由依が笑顔で華鈴さんを褒め称える。

 胸の前で手を合わせ、大絶賛というポーズだ。


「くっ……そんな素直に褒めてくださって……。少しは悔しがったらどうなんですの!?」


 華鈴さんは口元をもにょもにょさせながら怒ってみせるが、目元が完全に笑っている。


「嬉しそうだなあ」

「嬉しそうだね」


 オレと双葉は顔を見合わせて頷いた。


「そこの兄妹! 何を言ってますの!」


「だってなあ?」

「ねえ?」

「仲の良い兄妹で羨ましいですわね……」


 本当にうらやましそうに言うねえ。


「わかりましたわ。三人とも私の果樹園にいらっしゃい。どれだけすごいか見せてさしあげますわ」

「ほんとですか? ありがとうございます!」

「おお、あの梨のモギたてが食べられるのか」

「良かったねお兄ちゃん」

「貴方達……自慢をされるというのに、少しは悔しがるなりないんですの……?」


 よっぽど悔しがってほしいんだなあ。


 オレと双葉は、そんなことにいちいち腹を立てられるほど上流階級に生きてないからな。

 面白そうな体験をさせてもらえるならそれでいい。


「だって素直に喜んだほうが、華鈴さんは悔しがるかなと思って」


 一方の由依は、女神のような微笑みを浮かべながらこうである。


「貴女やっぱり性格変わりましたわよね!?」


 涙目になる華鈴さんである。

 ちょっとかわいい。

 これはいじりたくなるのも少しわかるぞ。



ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


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