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14章:ヴァリアントが見ている(13)

「俺は……俺はどうしちまったんだ……」

「キヒヒ。残念だなあ。オレが出ている時の記憶はないってか? つれないなあ。オレとのだいじな想い出なのになあ」


 赤崎とヴァリアントがころころと交互に入れ替わる。


「オレが人を……喰ったのか……?」

「思い出してきたか? オレが出ると一瞬記憶が戻るよなあ? キヒヒ……」


 この記憶の混濁は、赤崎の中にいるヴァリアントの能力だろう。

 宿主の記憶を曖昧にし、普段は普通の生活をおくらせる。たまにヴァリアントが表に出たときは、宿主の混乱と恐怖を楽しむ。

 悪趣味なことだ。

 狙ってやってる能力なのか、結果としてそうなっているのかは知らないが。


「そんな……そんな……!」

「だがその反応も飽きてきた。オレは腹が減ったんだよお!」


 赤崎の体を乗っ取ったヴァリアントが、青井に飛びかかる。


「いやぁっ!」


 青井は猫をかばうように抱きながら、そのその場にしゃがみこんだ。


「キヒヒ――ヒッ?」


 長く伸びた爪が突き立てられようとしたその瞬間、割って入ったオレが赤崎の手首を掴んで止めた。


「難波君!?」

「こっち」


 驚く青井を由依が抱え、後方に下がった。


「白鳥さんも!?」


 青井を下ろした由依は、神器を発動させ、青井をかばうようにして構える。


「なんだあ? めんどくさそうな人間が出てきたなぁ?」


 ヴァリアントは余裕の表情でにやりと笑った。


「なにあれ!? 健悟はどうしちゃったの!?」

「あれはヴァリアント。人の体を使い、人を喰う化け物だ」

「なにそれ……そんな……なんで……」


 青井は腰を抜かし、ガタガタと震えている。

 そうそう信じられる話ではないはずだが、彼女はおそらく緑山が赤崎に喰われるところを見ている。

 すでに忘れていても、まだ深層心理の奥には残っているのだろう。

 だから、あっさり信じたのだ。

 

「赤崎の体から出ていけ」

「それはできねえなあ。魂がまざっちまってるからなぁ。それに、だいじな人質でもあるわけだからなぁ! キヒヒ」


 ヴァリアントの伸びた爪がオレの顔を狙って来るのを、下がって避ける。


 掴んでいた手首を通じて解析してみたが、ヴァリアントの言うことは本当だ。

 本来ならばこのヴァリアントが顕現したタイミングで壊れるはずの『器』を、無理やり生かしているに近い。


「つまり、オレを殺せばコイツも死ぬぜえ? ほうら、どうするよ? オレぁたいした力はないけどなぁ、この能力で美味い人間メシをたらふく喰ってやるんだぁ」


 こいつはやっかいだ。

 だが、放置するわけにもいかない。


「まずはその娘だぁ。お前を喰わせろ。美味そうなんだよなあ。コイツが邪魔して昨日は喰えなかったけどよぅ。もう我慢できないぜぃ。あんまり我慢するとなあ、オレもコイツもおかしくなっちまうぜぃ?」

「私を食べたら、もう人を食べないと約束してくれる?」


 そう訊いたのは青井だ。


「ああん? キヒヒ、いいぜ」

「嘘だ。騙されるな」


 数日もしないうちに、次を喰いにいくだろう。


「わかってる。でも、私にはそれしか思いつかないの。健悟が誰かを食べるなら、最初は私にして」


 青井がふらふらと前へ出た。


ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


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