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【外伝短編】早乙女さんはメイド様(中編)

「完璧な掃除……。これを二人で……由依様?」


 ぴかぴかになっている洋館内に驚いた早乙女さんだったが、すぐ由依の様子がおかしいことに気がついた。


「ふにゃあ……はっ? 早乙女? んんっ。ちょっと掃除をさせてもらったわ」


 由依は咳払いをしつつ、姿勢を正した。

 まだ快感が残っているのか、脚をもじもじさせているが。


「お仕事を奪ってしまうことになって、プライドを傷つけていたらすみません。ただ、どうしても早乙女さんに休みをとって頂きたくて」


 早乙女さんの今日のノルマが、この洋館の清掃であることは調べが付いていた。


「……善意の押し売りをしないところには好感が持てますが、そういったことはして頂かなくて結構です」


 ぴしゃりと言われてしまった。


 それを見た由依が少しだけ悲しそうな表情を見せたが、すぐに白鳥家の顔に変わった。


「お父様から許可は得ています。私とカズが掃除をすませれば、早乙女に今日一日休暇をやってもよいと」

「しかし……休暇など頂いても……」

「やることがないとでも言うのでしょう? 小さな頃から仕えてくれたあなたをそうしてしまったのは、私にも責任があるわね……」

「めっそうもございません」

「じゃあ今日一日、私とカズにつきあって。これは命令よ。それなら良いでしょう?」

「承知しました」


 早乙女さんはいつもの無表情のまま礼をした。

 こりゃあ手強そうだ。


◇ ◆ ◇


 寝間着以外には私服を持っていないという早乙女さんに、由依が服をかすということで待つことしばし。

 由依の部屋から出て来た早乙女さんは、体にフィットする赤いTシャツに、タイトなスカートだった。

 モデルのようにすらりと背の高い早乙女さんが着ると、スカートは超ミニに、Tシャツの下からはおへそが見えてしまっている。


「私の服ではサイズが合わなくて……これならいいかなって」


 由依は満足げだが、これは街でかなり注目を集めそうだ。


「胸がぶかぶかです……」


 早乙女さんは別の意味で不満そうではあるが。

 なお、由依もメイド服から私服に着替えている。



 早乙女さんを連れて街へ繰り出すと、案の定注目を集めまくった。

 由依と一緒に歩くとこうなるのはいつものことだが、上背があり、セクシーな格好をしている早乙女さんがいるとなおさらだ。


 行き先は由依が決めているらしく、オレと早乙女さんは黙ってついていく。


「さあ、ついたわ」


 由依が立ち止まったのは、街にあるボウリング場の前だった。


「ここは……?」


 駐車場に立つピンを真顔で見上げる早乙女さん。

 もしかして、ボウリングを知らないのか?


「ボウリングという大衆娯楽を楽しむ場所よ


 大衆娯楽て。

 由依は得意げに解説を始めた。


「『あでやかリンコさん』の相性で親しまれていたプロボウラーなどが有名ね。一時期のブームほどではないけれど、若者のレジャーとしてはまだまだ元気があるものよ」


 その人が活躍したのって、オレ達が生まれる前では……?

 さてはこいつ、急いで仕入れたにわか知識だな?


「なあ由依、ボウリングはやったことあるのか?」

「う……ないよ……。先週、クラスのコ達がボウリングに行くって言ってたから、私も行ってみたいなって……」


 やっぱり。


「だったら、そんなに気張らなくても大丈夫だ。のんびり楽しめばな」

「買い出しでしか屋敷の外に出ない早乙女がいるんだよ。せっかくだから楽しんでほしいじゃない」

「由依様……」


 さすがの早乙女さんも、由依の言葉には少し驚いたらしい。

 僅かにだが、目を見開いた。


「そういうカズはやったことあるの?」

「何回かは……」


 未来でだが。


「裏切り者!」

「ええ!?」


 涙目になるほど……?


「まあまあ、やり方を教えるからさ」


 そうは言ったものの、このあとが少し大変だった。

 なんせ二人ともミニスカートなのだ。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 『あでやかリンコさん』の相性で親しまれていた 愛称?
[一言] そう書かれるとボーリング・・・遊びたくなるから不思議です。似たような娯楽としてはビリヤードなんかもそうですね。 凝りだしても比較的道具にお金が掛からないですし。 毎年買い換えるスキーやボード…
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