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13章:コンプリートブルー(23)


 陽山さんの叫び声は、真に迫るものだった。

 彼女の本性を知らなければ、本当に冷泉さんを心配してるのだとしか思えない剣幕だ。

 真実を知ってしまっている以上、しらじらしく聞こえてしまうが。


「違うの陽山さん」

「違わないでしょ! 泣いてるじゃない!」

「話を聞いてもらってただけで……」

「え……? あらキミ、スタジオに見学に来てた……。アイちゃんのファンになってストーカーしてるのね!」

「アイちゃん、話を聞いてってば」


 やさしげな表情でつっこむ冷泉さんの顔に既に泣いたあとはない。


 舞台もそうだが、アニメ用の芝居は、現実から考えるとかなりオーバーな表現をする。

 そうしないと、見ている人に伝わらないからだ。

 棒読みなどと言われる役者も、普段の生活であればそれほどひどい表現をしているわけではない。

 逆に、現実でアニメ芝居などすれば、ちょっとネジの外れた人と思われてしまうだろう。


 それだけに、声優が日常生活で演技をしようとするとわざとらしくなるのかなと勝手に思っていたのだが……。

 おそらく本心ではない冷泉さんの表情と声は、とても自然なものだ。


「ちょっと現役高校生に、お芝居のお悩み相談をね」

「悩みならあたしに相談してくれればいいのにぃ」


 二人にわざとらしさなど微塵も感じられない。

 これがプロってやつか。


「ごめんね。どうしても高校生の意見を聞きたくて」

「あー! あたしはもうおばちゃんってこと?」


 アラサー以上の女性が聞いたら怒りそうなことを言うなあ。


「もう相談は終わったから大丈夫」

「でもアイちゃん、泣いてたじゃない」

「あれはお芝居。ちょっと難波君に見てもらってたの」

「ならいいけど……。キミ、アイちゃんの練習を生で見られるなんて、ちょーラッキーなんだからね」


 そう言って、オレの鼻先にびしっと人差し指をつきつけるしぐさがまたかわいらしい。

 清純派であるとだまされてしまいそうになる。


「はぁ……」


 そのギャップについていけず、オレは気のない返事をするので精一杯だった。


「ってことはアイちゃん、難波君とこんなところで待ち合わせたってこと!?」

「いえ、たまたま見かけたオレが声をかけさせてもらったんです」


 彼女の名誉のために、ここは助け船を出さないとな。


「へー。なんでこんなところにいたの?」


 まだ疑いの眼差しを向けられている。


「友達と遊びにきてたんです」

「こんな夜に?」

「はい」

「その友達が見当たらないようだけど?」

「そこにいますよ」


 オレが指さしたのは、公園内に立っている小さな建物だった。

 暗闇で人影は見えず、声も届かないくらいの距離にある建物の陰から、こそこそと女子三人が現れた。

 由依達である。

 いったんわかれてから、付いてきているのには気付いていた。

 ちなみに変身を解いた美海は、破れてしまった服の代わりを着ている。


「こんなにかわいい女の子を三人もつれて……。いったい何をやったの?」

「人を犯罪者みたいに言わんでください!」

「だって……ねえ?」


 そこで何故オレと由依の顔を見比べるのかな!?

 日本一と言っていいほどの美少女と釣り合う顔の男なんてそうそういないかならね!?

 壇上の陽山さんならこんな反応は絶対しないはずだが、今はプライベートモードということだろうか。


 ひとまず彼女からの追及はおさまったようでなによりだ。

 冷泉さんの力になれたかはわからないが。


ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


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