13章:コンプリートブルー(19)
今日もオレ達4人は、夜の街で訓練を兼ねたヴァリアント狩りをしていた。
「ねえカズ。なんだか怪しい雰囲気の町並みなんだけど……」
オレ達が今いるのは、繁華街に隣接するラブホが連なる通りだ。
「お兄ちゃん……」
そんなジト目で見ないでくれるか双葉。
他意はないんだよ。
「カズ君……ついに覚悟を決めてくれたのね」
美海の勘違いはいつものことなので放っておいていいかな。
「いや、そういうんじゃなくてな」
「ああ……なるほどね。原因はアレでしょ」
由依が目で指したのは、ビルのカゲに隠れて何かを見ている冷泉さんだった。
「いやあ偶然だなあ」
「お兄ちゃん……。いくらなんでも声優さんの後をつけるとかちょっと……」
妹よ、さらっと流さないでくれ。
「違うって。ちょっと気になっただけで」
「気になったから見守ってたと?」
「そうそう」
おお! わかってくれたか。
「それってストーカーじゃない」
「え!? 違うぞ!?」
全然わかってくれてなかった。
たしかにそう聞こえる答弁だったかもしれないが。
オレの記憶によると、冷泉さんがヴァリアントに喰われる可能性があるからなのだが、それを言うわけにもいかない。
未来を知っているということは、彼女達には黙っておきたい。
中身がおっさん経験者だと知られたくないというのもあるが、知らない未来は希望だからだ。
オレが未来に関する知識があると知れば、頼ってしまうこともあるだろう。
それはきっと彼女達のためにならない。
なんとかうまいこと言っておこう。
「彼女にヴァリアントと接触した気配を感じたんだ」
気配なんてあいまいな表現だが、ギリギリ完全に嘘ではない……よな?
「うーん、カズがそう言うなら間違いないんだろうけど」
納得していなさそうな由依だが、それ以上追求してくることはなかった。
「ここ最近、場所を選んでる感じがしたのはこのせいだったのね」
そこまで察していたとは恐れ入る。
だが冷泉さん、こんなところで何をしているのだろう。
まるで、ホテル街に張り込むゴシップ誌のカメラマンだ。
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