3章:神って欲望にまみれたヤツ多いよな(8)
「ふむ……脚とはまたやりにくい。やはり武器はハンマーに限るのだがな」
加古川がサッカー部で脚の扱いが上手かったからか?
能力は顕現もとになった人間にひっぱられるのだろうか。
「まず一発目! 避けるなよ!」
トールは空高く飛び上がると、まるで仮面バイカーかガンビースターのように蹴りのポーズで降ってきた。
雷が迸る足先には、大量の魔力が蓄積されている。
あんなものが地面に衝突したら、周囲数十メートルがクレーターになるぞ!
「カズ逃げて!」
その威力を察したのか、由依が悲鳴をあげた。
ここで避けたら由依の命もない。
オレは頭上から降ってくる足の裏目がけて拳を突き上げた。
――ドゴォン!
足と拳の接点から強烈な衝撃波が発生したが、それだけだった。
「おいおい、こいつを止めた上に雷を相殺しただと? 神話時代の武力と魔力が両方そろってないとできない芸当だぞ。お前、本当に人間か?」
セリフとは裏腹にトールは実に楽しそうな声でにやりと笑った。
「ちょっと努力をしただけの、普通の人間だよ」
「くはは! こちらも聞きたいことができたぞ! 少し楽しませてもらおう! いくぞおらぁ!」
トールは大声をあげながら殴りかかってきた。
オレはその拳を、蹴りを、魔力で強化した肉体で捌いていく。
剣は背中に背負うように浮遊させている。
さっさと斬りつけてしまいたいところだが、まずは情報だ。
「扉が貧弱な人間とはいえ、オーディンでもここまで俺様の攻撃を捌けなかったぞ!」
「さっさと情報をよこせよ」
「いいだろう! 心して聞くがよい!」
そう言いながらも、トールは攻撃を続けてくる。
「まずオレ様達神族はすでに現世への影響力を失っている。だがいつからか人間を扉にこちらに来られるようになったのだ」
「なぜそんなことが?」
召喚に近い作用だ。神クラスを召喚など、並の術者……いや、人間にできることではない。
由依が持っている情報とは随分違う。
「わからん!」
つかえねえな!
「いつこちらに呼ばれるのかも、誰が呼ばれるのかも、我々神族にもわからん。だが一つ言えることは、とても腹が減るということだ」
「まさか、人間を喰いたくなるのか」
「お、そこは知ってるんだな。感心感心。雑兵あたりだと自我がぶっとぶくらいの食欲だがな。俺様クラスなら制御も可能よ」
雑兵とはダークヴァルキリーのことだろう。
顔や姿に特徴がなかったことからも、個性を残せるのはもとが強力な存在だった場合に限るのかもしれない。
「喰わずにいられるのか?」
「いいや。意識が飛ばねえってだけだ」
だめだ。こいつは何が何でもここで殺さねば。
「ほう……けっこうな殺気を出すじゃねえか。この時代は思ったより殺伐としてやがるな。楽しいぜ! 天界でひまそうにしている奴らは悔しがるだろうなあ!」
連中の意思でこちらに来ているわけではないってことか。
そろそろ時間切れか……。
これ以上聞けることもそう多くなさそうだ。
しゃべりたがりなのは助かったが、思ったより情報を持ってなかったな。
「さあてここからが本番だあ!」
トールは両足から発生させた雷を、全身に漲らせた。
「どんな神剣をも弾く俺様の肉体でバラバラにしてやる!」
その言葉に嘘はないのだろう。
だが、オレの剣はどんな神剣よりも強い!
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