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13章:コンプリートブルー(13)


 オレをブースに残したまま、調整室では監督や音響監督達の審議が続いている。

 あちら側の声は聞こえないが、姿は見える。

 意識せずとも、彼らの唇を読めてしまう。


『悪くないんじゃないか?』

『ですね。少なくともそこらの養成所生や、デキの悪い新人よりは』

『別録りの選択肢は?』

『もう一度スタジオをおさえる予算はないって返事が来ました』

『決まりだな』

『はい』


 え……マジ?


 結局オレは、そのまま出演することになってしまった。

 冷泉さんからマイクワークなどの簡単な説明を受け、収録がスタートする。


 1度のテストの後、いくつかのディレクションが入り、すぐに本番が始まった。

 たったそれだけで、プロ達の収録は滞りなく進む。




 オレの出番もさっくり通り過ぎ、収録は終わった。

 プレの声優達が音も無くページをめくるのを見て、魔法で自分の台本から出る音を消すなどして、演技以外に集中できる環境を作ったり、小細工はしたが。

 ちなみに足音は、もともと消すクセがついているので問題無い。

 某暗殺家業の一族みたいにな。


「お疲れ様でした~」


 収録が終わると、数人の声優はすぐにスタジオを出て行った。

 次の収録があるのだという。

 想像していたよりも、ずっと流れ作業のように進んで行く。

 これがプロか。


「じゃあ残った人で飲みに行きますか」

「はーい」「あたしもいきまーす」


 監督の誘いに残ったキャスト達が元気に答える中、冷泉さんの顔が一瞬だけ曇った。


「……私はこの後予定があるので」

「冷泉さん、前も言ったけど、こういうのは参加しといた方が得だよ?」


 帰ろうとする冷泉さんを、音響監督が引き留めている。

 なんか……ヤな笑顔だな、この人。


「すみません。難波君を送っていかないといけないので」

「綺麗なお姉さんのエスコートとはうらやましい」

「やめてくださいよ」


 愛想笑いをした冷泉さんは、オレに目で着いてくるよう促し、スタジオを後にした。




 スタジオを出ると、既に夕日がビルの谷間に沈もうとしていた。


「ごはんを食べて帰るのですが、一緒にどうですか? おごりますよ」

「そんな、悪いですよ」

「遠慮しなくていいですよ。そんなに高いところには行きませんから。お礼はそれで終わりということで」

「そういうことであれば……」


 オレが声優さんからご飯に誘われる日が来るとは……。

 小躍りしたくなるような出来事だが、必死に平静を装った。


 行き先はちょっとお高めのファミレスである。


 ボックス席に案内されたオレと冷泉さんは向かい合って座り、思い思いの注文をした。



「今日はありがとうございました。とても良い経験ができました」

「それなら良かったです。あらためて、あの時は助けてくれてありがとうございました」

「いえ…………」

「…………」

「…………」

「…………」


 無言! 沈黙!


 オレなんで夕食に誘われたんだろう……?


ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


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