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13章:コンプリートブルー(10) SIDE 冷泉

SIDE 冷泉



「ふぅ……」


 難波さんとの電話を終えた私は、ベッドで一息ついた。

 やはり男性との電話は緊張する。


 仕事中は『冷泉アイ』を演じ続けているので、ここまで緊張することはない。

 今回のことだって仕事の延長にあるはずなのに、プライベートでの買い物が発端だったせいか、冷泉アイの仮面が剥がれかけている。

 しっかりしなければ。


 いくら助けてもらったからといって、ここまでお礼をする必要があったかというと、自分でも疑問だ。

 でも、どうしてもそうしたかった。

 なぜだろう。

 これまでも仕事で助けてくれた人はたくさんいた。

 それは商品価値のある冷泉アイだからだろう。


 そうか……。

 難波さんは、私が冷泉アイであると気付く前から助けてくれた。

 損得なしに、見ず知らずの人に助けてもらったのって、初めてだからだろうか。


 彼に下心がなかったことは、見ればわかる。

 それなのに、当たり前のように私を助けてくれた。

 私に近づく人達は、何かしらの見返りを求めてきた。

 それを口に出さないまでも、私にはわかってしまう。


 だけど、彼にはそれがなかった。


 だから、私も報いたいと思ったのか。


 してもらったこと自体は、それほど大したことではないと人は言うだろう。

 それでも私には大きなできごとだったのかもしれない。

 スタッフさんにちょっと無理を言ってしまうくらいには。


 明日のお礼が終われば、彼と会うことはもうないかもしれない。

 だからこそ、楽しんでもらえれば嬉しい。


 私にそんな他人を想う気持ちが残っていたことに驚く。

 この経験は、役者として活きるだろうか。

 そうであれば、なおさら彼には感謝しないといけない。


 それにしても、私の気分が落ちていると気付いたことには驚いた。

 男子高校であれほど他人の気持ちの機微に敏感な人を見たことがない。

 それとも、私が冷泉アイの仮面を被りきれていなかったということだろうか。


 私は今日、講演会が終わった後の収録でおきた事を思い出し、身震いした。


 納得のいかない理不尽な罵倒は慣れている。

 立場を利用し、仕事を盾に女である私を狙ってくる男達にも。

 だが、そんな私をかばってくれた陽山さんの『あんなところ』を見てしまったことは、私の心に濃い影を落とし、消すことができずにいる。


 私を罵倒し、体を狙う音響監督とホテルになんて……。

 なぜ彼女は憎んでいたはずの彼と……。

 私のため……?


 偶然見てしまった肩を抱かれる彼女の後ろ姿が、いつまでも目に焼き付いて離れない。

ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


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