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13章:コンプリートブルー(2)

 そこは、ちょうどスーパーの出入り口から死角になっている場所だった。


 周囲にいるのは、言い争う男女だけだ。

 女性はTシャツにジーパンとシンプルな格好が、細身の体によく映える。

 目深に被ったキャップとサングラスのせいで歳はわからないが、二十代前半くらいだろうか。


 男性の方はバンダナ、ウェストポーチ、チェックのシャツに指ぬきグローブという、いくら90年代だとしても、実際にそんなヤツいるかという格好だ。

 歳はアラサーくらいだろう。

 その手には、大きな紙袋を持っている。


「うけとってください! いつもラジオ聞いてます!」


 男が紙袋を女性に押しつけるように差し出した。


「だから……人違い……」


 女性はボソボソと言いながら後ずさる。

 その背中は、スーパーの壁についている。


「ボクが見間違えるわけないよ! ほら、受け取ってください! 一生懸命作ったんだ!」


 男が紙袋から取り出したのは、クマのぬいぐるみだった。

 手作りのぬいぐるみをこんなところでプレゼント……?

 女性はラジオパーソナリティーか何かなのだろう。

 男はそのファンということか。


 助けたいところだが、どうしたもんかな。

 彼氏のフリをして登場というのが鉄板ではあるが、女性側に不利益のある噂の種になってしまうかもしれない。

 『おまわりさんこっちです』の術をやるには、周囲の見通しが良すぎる。

 とりあえず身内のフリをするのがいいか。


「姉さん何やってるんだよ。家で父さんが待ってるぞ」


 人間レベルで威圧感を出しながら、オレは二人に近づいた。


「知り合い?」


 目でちらりと男に圧をかける。


「いいえ、人違いみたい」


 女性は変わらずボソボソとした声で答える。

 声は小さい割に、よく通るんだよな。

 それにしても、どこかで聞いたことのある声なような……。


「くっ……応援してるからね!」


 男は斬新な捨て台詞とともに逃げていった。


「ありがとう。あやうく人前でキレてしまうところでした」

「そっちの心配!?」


 初対面の相手に思わずつっこんでしまった。

 そんなオレの反応に、女性は口の端をわずかに持ち上げ、微笑んだ。

 もしかしてめっちゃ美人?


「お礼できるものは持ち合わせておらず……」


 男がいなくなっても、かわらずボソボソとしゃべるんだな。

 女性はすまなそうにしているが、別に下心があったわけじゃない。


「いいですよそんなの。それじゃあ」


 あまり由依を放っておくわけにはいかない。

 オレは女性を置いて、さっさとその場を後にした。


「あ、ちょっと!」


 なおも声をかけてこようとする女性を振り切って、由依の元へと戻った。

 正直気恥ずかしさも大いにあった。


 それにしても、なんであの女性のことを気になったんだろうか……。


ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


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― 新着の感想 ―
[一言] 神器を発動させるとハッキリしゃべるようになる感じの新戦力の予感
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