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12章:ヴァリアント支配伝ヒミコ(16)

 四人で長野観光を楽しむことしばし。

 周囲から浴びせられる好奇の視線も旅の恥はかきすてと無視し、あちこち見て回った。

 ヴァリアントが集まりつつあるとは思えない、のどかな風景だ。


「お兄ちゃん」


 山に沈む夕日を眺めながら町を歩いていると、双葉が真剣な顔でオレを見上げてきた。


「動いたか」

「うん。ヒミコが山に集まってるヴァリアントから魔力を吸い上げて何かしてる」

「よし、みんな行くぞ」




「来たか、ナンバカズ」


 山頂にある最も高い木の上に立つヒミコが、オレの姿を見て満足そうに頷いた。

 なお、オレは魔法で飛行、由依はオレの手にぶら下がり、双葉はオレの浮遊魔法で浮いている。

 美海は既に神器の発動をすませ、姿を消した状態でオレの背中におぶさっている。


 由依が浮遊していないのは、その方が機動力が確保できるからだ。

 今の由依なら、空気を蹴って空中を高速移動ができる。

 双葉はそもそも機動力がないので、オレが護ってやる必要がある。

 美海は地上での機動力は高いのだが、空中戦はまだ無理だ。

 彼女の能力を活かす意味も含め、こういった布陣になっている。

 背中がやわらかいです。


 なぜ空中戦想定なのかと言うと……。


「来たな」


 ヒミコの視線の先から、姿こそ見えないが、空中を大量の魔力反応が向かってくる。

 その数200。

 ヒミコ側の500に比べるとかなり少ない。

 双方、それなりに高位のヴァリアントも混ざっているが、大半を占めるのは低鬼だ。

 割合だけで言うなら、ヒミコ側の方が低鬼の割合が高いか。


 不可視と飛行能力を持つ結界で、集団を覆っているのだろう。

 意思疎通を取りにくい部隊を運ぶのには、効率的な方法だ。

 この方法でやって来ることが、ヒミコ側はわかっていたのだろう。

 彼女達が準備していた結界は、空中に向けてのものだった。

 だからオレは、山の調査を早々に切り上げたのだ。

 実は前日の深夜に、一人で飛んで見に来ていたというのもあるが、それは由依達には内緒である。


 ヒミコが手に持った鏡を向かい来る魔力に向けると、鏡から発せられた光に照らされた者からその姿を現した。

 確認するまでもないが、全てヴァリアントだ。


 ヒミコは手に持つ鏡を高く掲げた。

 それに続いて、森に散らばった彼女の部下達が浮遊すると、彼らから鏡に魔力が集中して行く。

 鏡が一際強く輝くと同時に、オレ達を含めた2キロ四方が神域絶界に包まれた。

 部下達を魔力のタンクにしつつ、さらに彼らを神域絶界を展開するためのきっかけにしたのか。


 結界を準備しているとは思っていたが、やはり神域絶界だった。

 ここで派手に暴れれば、海外勢がはいってきている今、横から狙われる可能性が高いという判断だろう。

 部下を使っているとはいえ、ポセイドーンの『海中』のような条件抜きでこれほど広域のものを展開できるのは、さすがといったところだ。


「ヒミコ……やはり立ちはだかるか……」


 集団の前に現れたのは、後頭部が大きくとびだした黒い和服の老人だった。

 この外見……妖怪の総大将、ぬらりひょんか。

 妖怪もヴァリアント化するとは驚きだが、八百万の神という概念がある日本においては、そう不思議なことでもないかもしれない。



ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


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― 新着の感想 ―
[一言] もつはいつのまにか自然と家にいるだけのおっさんだったのに、なんの因果か総大将になったんですよね。 ゲゲゲの仕業?
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