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12章:ヴァリアント支配伝ヒミコ(6)

「出なくていいって、由依……」

「ほ、ほら。もう脱いじゃったんだし、早く洗ってつからないと、風邪ひいちゃうから」

「いや、大丈夫だと思うが……」

「いいから!」

「は、はい!」


 視界の端でとらえた由依の後ろ姿は、耳まで真っ赤だった。

 混乱しているのかなんなのか、判断の難しいところだな。

 などと分析している場合ではない。


 リーダーキャンプを思い出すが……あの時は双葉もいたが、今回は二人きりだ。

 緊張する……。


 ……とりあえず体を洗い終わったオレは、湯船に向かう。


 ちらりと由依を見ると、湯船にタオルはつけていない。

 乳白色の湯に隠れてはいるものの、今にもあちこち見えそうだ。

 胸が浮いてしまうらしく、腕と膝でおさえているせいで、その大きな谷間にたっぷりお湯がたまっている。


 オレは必死に体内の血液を操り、アレがアレしないように集中する。

 こんな時のために自分の体を操る術を磨いてきた……わけない。


 由依と向かい合うのも気まずいので、一人分ほどの間をあけて並んで湯船につかる。


 見えている肌は水着より狭いかもしれない。

 それでも、一糸まとわぬ姿であるというだけで、ドキドキする。

 これも高校生の体になっているからか。

 いやいや。

 アラフォーでもこんな美少女と風呂に入ったらドキドキするわ!


 それも子供っぽくはしゃいでくれればまた変わったかもしれないが、妙に艶めかしいから困る。


「二人きりになるの、なんだか久しぶりだね」


 ほらあ!

 若さ故の恥ずかしいセリフが心に刺さるよ!

 だがこんなときこそ、年の功を見せねば。

 平静を装うのだ。


「いつの間にか仲間も増えたしな」

「うん……大丈夫かなみんな……」


 由依は視線を湯へと落とした。

 生まれつきヴァリアントと関わる使命を持っていた由依からすると、平和に暮らしていたはずなのに、後からヴァリアントに関わることになった双葉や美海を案じているのだろう。

 それは、命もそうだが心もだ。


「何も知らずにいれば、ヴァリアントに喰われる可能性はそこまで高くないだろう」


 交通事故と比べてどうか……などと言われてもわからないが。


「そうだよね……」

「そして、ヴァリアントと戦えば、今回のように狙われる可能性も出てくる」

「うん……」

「だけど、オレの仲間として戦うなら、絶対にオレが死なせたりしない。オレの力は何度も見てるだろ?」

「そっか……そうだよね。うん……」


 異世界で何人もの仲間の屍を乗り越えるハメになったオレが言えたことではないんだけどな。

 今度こそ、護ってみせる。


「でも、私はカズにも……ううん、カズこそ絶対死んで欲しくないんだよ……」


 由依がそっととなりに近づいてきた。

 肩を触れさせる程度のつもりだったのだろう。

 しかし、彼女の豊かすぎる胸は、湯の中で揺れ、オレの二の腕にその先っちょがふよりと触れた。


「ひゃ……」


 体をぴくんと跳ねされた由依が慌ててオレに背中を向けた。


「わ、忘れてね……」

「おう……」


 しばらくの沈黙の後、由依はゆっくりとその背中をオレに預けてきた。

 触れあう部分が、温泉の湯よりも熱く、その熱は布団に入ってもなお、冷めることはなかった。



ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


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