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12章:ヴァリアント支配伝ヒミコ(1)

  ■ 12章 ■



 築二十年の小さな二階建てマンションが盛大に燃えている。

 室内も狭く、新しいとは呼べないものだったが、最初の人生も含めて、色々な思い出のある家だ、

 燃えさかる炎が、夕暮れのオレンジを濃い赤へと染めている。


 ふ、双葉!

 中にいるんじゃないのか!?


「お兄ちゃん!」


 オレが燃えるマンションに飛び込もうとすると、後ろから声をかけられた。


「双葉! 無事だったか!」

「うん、買い物に行って帰ってきたら、もう燃えてたの」

「そうか……よかった……」

「でも火事の原因になるものなんてなかったはずなんだけど……」


 不安げな顔で見上げる双葉の視線は、オレ達の部屋に注がれている。

 うちが一番燃えている。

 出火元はうちなのか?

 だが双葉が言うように、原因になりそうなのは、コンセントとコンロくらいしかないが……。


 消防車はすでに到着しているものの、ひとまず逃げ遅れた人がいないか、マンション内の気配を探る。

 うちが角部屋だったことが幸いしてか、建物内に人の気配はない。


 ただし、「人は」である。


 燃える屋根の上に、こちらを見下ろす黒い影が現れた。

 人の形をしたその影と目があった気がした瞬間、消え去った。

 瞬間移動だ。


 ヴァリアントか……。

 うちを燃やしたのも今のやつだろうか?

 だがなんのために?

 オレを襲ってきたのか?

 いきなり火を放つというのは雑にもほどがあるが。

 考えたところで答えをだすことは難しいだろう。

 瞬間移動で逃げられたため追うのは不可能だが、魔力パターンは覚えたぞ。



◇ ◆ ◇



 その後警察に連れて行かれたオレと双葉は、別々の部屋で色々と聞かれていた。

 明らかに火元なのだからわからなくはないが、やはり良い気持ちはしない。


 そこへ現れたのは、救いの女神だった。

 由依がオレ達を警察署から出してくれたのだ。

 話の途中でである。

 白鳥家パワーを使ったのか。

 警察官達は不快な顔をしていたが、それもまた当然だろう。


「ありがとう、助かったよ」

「えへへ。カズの役に立てることなんて滅多にないもの」

「いいや、いつも助けられてるさ」


 これは本当だ。

 由依が近くにいてくれることで、どれだけ心が満たされているか。


「こほんっ。由依さん、ありがとうございました」


 そこへ、咳払いをしつつ割って入ったのは双葉だ。


「どういたしまして」


 ふふーん、としてやったり顔の由依である。

 仲が良さそうでなによりだ。


「ところでふたりとも、今日泊まる場所はないよね?」


 今日どころか、明日以降も行くあてがない。


「じゃあさ……」


 由依の提案は、内心期待していなかったと言えば嘘でありつつも、とても恐縮するものだった。



ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


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