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11章:水の星へ覚悟を込めて(3)

◇ ◆ ◇


 電車を乗り継ぐこと約2時間。

 目の前には青い海と、大量の人がいた。

 海に来たのか、人を見に来たのかわからないこみっぷりである。


「海だー!」


 それでも元気いっぱいに両手を上げて叫ぶのが渡辺である。

 他の客からチラチラ見られても、そんなことは気にしないらしい。

 一方美海は、自分が叫んだわけでもないのに真っ赤になってうつむいている。

 大人になれば、こちらが思うほど周囲の人達は気にしてないとわかるのだが、年頃というやつだろう。

 当時はオレもそうだったしな。


 ちなみに今日の女子メンバーは、渡辺、由依、美海、鬼まつりに加え、話したことのないクラスの陽キャ女子だ。

 男子はオレの他に、渡辺狙いで有名な来栖と、陽キャ男子1名である。

 2人ほどからんだことのない奴がいるのだが、ふたりでずっとイチャついているので、カップルなのだろう。

 放っておいても問題なさそうだ。

 合計8人。なかなかの人数である。


「荷物を置けそうな場所あるかなあ」


 渡辺があたりをキョロキョロと見回すも、砂浜は人とパラソルで覆い尽くされている。


「あっちにスペースがあるな」


 かなり離れているが、8人分のシートを広げられる程度のスペースがあいている。


「え? どこ?」「どこだ?」「わかんないよ?」


 首を傾げるメンバーをつれて歩くことしばし。


「おお……ほんとにあいてたよ。難波君やるじゃない。すごく目がいいんだね」


 渡辺がオレの背中をぺちぺち叩く。


「たまたまだよ」


 そう言いながら、オレは砂浜にシートを広げた。

 残念ながらパラソルのレンタルは品切れだったが、夏にしては日差しが弱いのが救いだ。


「じゃあ着替えておよごー!」


 渡辺の号令で、みんなが服を脱ぎ始めた。

 事前に渡辺から、水着は服の下に着てくること、女子はワンピースが着替えやすいという情報が回ってきていた。

 このあたりはさすが委員長だ。


 すぽーんと脱いで見せる渡辺や鬼まつりに対し、由依は優雅に、美海は恥ずかしそうに脱いでいく。

 それぞれにすごいプロポーションだが、特に由依は周囲の視線を集めている。


 陽キャカップルは「やっぱりみんなすごい……」「オレにとってはお前が一番さ」などと勝手にいちゃついているので、やはり放っておこう。

 こいつらはなんで二人だけで来なかったんだ?


 女性陣は鬼まつりを除いて全員ビキニだ。

 この時代はまだ、ビキニの方が圧倒的に多くなる前のはず。

 周囲をみても、ワンピースの水着を着ている女性がたくさんいる。

 なかなか攻めた選択だ。


 そして鬼まつりは……こいつ、なんでスク水なんだ?

 うちの高校はプール授業がないので、わざわざ買ってきたということになるのだが。


「どう……かな……?」


 そんな鬼まつりがオレに感想を訊いてくる。


「どうと言われても……。マニアックだな?」

「え!? 難波ってこういうのが好きなんじゃないの!?」

「オレをなんだと思ってるんだよ!」


 マジテンションで驚かないで欲しい。

 2次元なら好きだけどな。ただし、白スクに限る。


 そんなやりとりを見た由依が、すっとオレに近づいてきた。

 ちなみに今日の由依は、黒タイツをシュシュに変化させたポニーテールだ。

 すぐ戦闘状態に入れないデメリットはあるが、いくらなんでも公衆の面前で水着に黒タイツをやるわけにもいかない。

 なお、シュシュ型になった黒タイツはあきらかに体積まで変わっているが、さすが神器というところか。


「似合ってるぞ」

「ありがと」


 少し恥ずかしそうにはにかむ、実に良い笑顔だ。


「カズくん……」

「美海も似合ってる」

「うん!」


 相変わらず前髪で目は隠している美海だが、その胸の主張までは隠せておらず、男性陣の視線を集めている。


「あれ? 二人ってば、いつのまに名前で呼び合う仲になったの?」


 渡辺がニヤニヤしながらつっこんできた。

 こういうことにはめざといなぁ。


「さあな」

「えー? あやしいなあ」

「渡辺が期待するようなことは何もないぞ」

「えー?」


 口をとがらせながらの笑みをうかべるという器用な表情をした渡辺が、肩を落としてへこんでいる鬼まつりに何かを囁いている。

 どうせまたろくでもない煽りをしているんだろう。


 さて、海に来たはいいが、何をしたらいいのかさっぱりわからないんだが?

 スイカ割りをするようなスペースはないしな。



ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


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