10章:テーマパーク(16)
オレは宇佐野の神器を強制停止させた。
核を合成した時に構造を把握していたからこそできる技だ。
もたれかかってきた宇佐野の獣化が解けていく。
おいこれ……変身時に服が破れてるぞ。
人払いの効果が消え、周囲に人が戻ってきている。
このままでは宇佐野の素っ裸を晒してしまう。
この場にいる誰も、貸せる上着を持っていない。
「え? はだか……? そ、そそそれに私なんてことを!」
慌ててオレから離れた宇佐野は、真っ赤になってその場にしゃがみこんだ。
性格に影響を及ぼすタイプの神器のようだ。
オレは自分のTシャツを脱ぐと、宇佐野に被せた。
「すぐ戻る」
由依と双葉にそう伝えると、オレは宇佐野を抱え、夜空へと飛び立った。
「と、飛んでる……」
オレは周囲に結界を張り、雲よりも高く飛んでいる。
夜景を楽しみたいかもしれないが、オレは真っ直ぐ目的地へ向かって降りていく。
「速っ!? ねえ難波君! これ墜ちてない!? ねえ!?」
「自由落下よりスピード出てるから安心してくれ」
「安心できないんだけど?」
「それだけ加速してても体に影響ないだろ? だから大丈夫だ」
「たしかに……普通ならブラックアウトしてそうな加速だった……って、そうじゃなくて!」
「ついたぞ」
「へ? ここって?」
「うちの玄関」
「難波君の家?」
「そう」
「お持ち帰り?」
「てきとうな公園に放りだしてもいいんだが?」
「なんでもありませんごめんなさい」
「とりあえず家の中で待っててくれ。妹のもの以外は適当に使ってくれていい」
「え? え? いいの……?」
少しにやけているのがなかなかに不安だが、その姿で宇佐野の自宅に連れて行くわけにもいかない。
とりあえず一人でおちつかせるのが良いだろう。
「カチューシャは外しておけよ」
オレは宇佐野を自分の部屋に通し、風呂をわかしてバスタオルを渡すと、再び夜空へと飛んだ。
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