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10章:テーマパーク(14)

「あの化物と戦うのは初めてじゃないの……? 白鳥さんも、それに妹さんも……?」


 宇佐野は木の陰から出て来た双葉も含め、オレ達三人の顔を順番に見た。

 その顔は驚きと僅かな希望に満ちていた。

 なかなか良い度胸をしている。


「こうなったら説明せざるを得ないが、その前に……」


 オレは宇佐野と幼女、そして由依の傷を魔法で治した。


「傷が……治ってる? まるで魔法みたい……」


 驚く宇佐野はいったんおいておき、切り倒された木々を持ち上げ、切り口をできるだけそろえた上で治癒魔法をかける。

 植物ならこれで治る。

 よく見るとちょっと接合部がいびつな木もあるが、それはまあ……許してもらおう。

 ベンチなんかの無機物は治癒魔法では直しようがないので、このままだ。


 最後に、気絶している幼女に念のため睡眠魔法をかけておく。

 さて……宇佐野にどこまで説明するのがよいだろう?

 他人に言いふらしたりするタイプではなさそうだが、下手に巻き込むわけにもいかない。


「私も一緒に戦いたい!」


 オレが悩んでいると、宇佐野は開口一番そう言った。

 彼女は矢継ぎ早に続ける。


「数奇な運命に導かれた男女が、特殊な能力を使って世界の裏に蠢く異形と戦う! こんな展開が現実にあるなんて!

 もちろん秘密は守ります! 白鳥さんが『適合できた』っていってたから、コレを使えるのはレアなんだよね?」


 宇佐野はカチューシャを指さした。

 フィクション作品に日頃から触れているせいか、理解……というか、妄想が早い。

 説明する必要がほとんどないぞ。


「だったらきっと私も戦力になるよ! 今はまだ難波君や白鳥さんの足下にも及ばないかもだけど、役に立てるようになるから! お願いします! 仲間に入れてください!」


 宇佐野が真剣な顔で勢いよく頭を下げた。


「このやる気……逆に危ない気がするわ」


 由依が若干引き気味に、渋い顔をしている。


「オレも同感だ。ノリで首を突っ込むと死ぬぞ。それに、今は急に非日常に巻き込まれて舞い上がっているかもしれないが、いざとなったら逃げ出したくなると思うけどな。それが生物としては正しいことだし」

「それでも私は特別になりたい!」


 宇佐野がまっすぐオレを見て言った。

 変身によるものだろう。カチューシャによって前髪は上げられているので、目は出ている。


「特別だと思うのは最初だけで、すぐにそれは辛い日常になるだけだぞ」

「それでも……それでも、難波君にとっての特別な一人にはなれるでしょ?」


 振り絞られた宇佐野の声はかすれ、震えている。


 オレは思わず、ガシガシと頭をかいた。


「たしかに戦友という意味で、ただのクラスメイトよりは特別にはなる。だけど、由依や双葉のようにはならないぞ?」

「それでもいいの」


 はっきりしたオレの物言いに、宇佐野は迷わず頷いた。


 由依を見ると、あきらめたように小さく首を横にふった。

 双葉は口をとがらせながらも、宇佐野が抱いている幼女を眺めてる。


 二人とも消極的承諾ということか。


「ここで仲間に入れてくれなかったら、一人でさっきの化物と戦いにいっちゃうから!」

「わかった、わかったよ。しばらくお試しで仲間になってみるか」


 仲間にしたくないのなら、強硬手段をとることもできる。

 だが、彼女は大丈夫だとオレの直感が言っていた。

 おそらくカチューシャが彼女を選んだということもある。


 とはいえ、まずはお試しからだ。

 彼女が本当に覚悟をできるのか、決めるのはまだ早い。

 おそらく、人生最大の覚悟となるからだ。


ここまでお読み頂きありがとうございます。

続きもお楽しみに!


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